――BiSHの活動によって自分の言葉が磨かれてきたという手応えは感じていますか?
歌詞もそうですし、BiSHはツアーのときに毎回、最後の曲の前に1人5分ぐらい話すことにしていて、MCをやる中で言葉はすごく磨かれたなと思っています。東京ドームのときも最後の曲の前に1人2分話す時間があり、それがBiSHとしての最後の言葉になりました。暗記するぐらい用意していた言葉がありましたが、そのときの感情をキャッチして言葉にしたいと思い、暗記した言葉を全部捨ててそのときの生の言葉でしゃべりました。
――その場の感情で話したのは解散ライブが初めてでしたか?
その場で感じたことを話すことはありましたが、事前にたくさん言葉を用意する人でした。よくファンの方からモモコの言葉は生々しいと言われますが、これからも生々しさは意識しようと思っています。
――今後は小説家としての活動が軸になっていくのでしょうか。
小説はすごく奥深くて、真っ白なキャンパスに好きな絵を描いていいと言われているのと一緒な気がしていて、すごく夢のある行為なんです。なので、じっくり書いていきたいと思っていますし、エッセイも書きたいものがたくさんあるので書いていきたいと思います。
――作家としての野望はありますか?
頭の中に本にしたいテーマが何個かあるので、それを一個一個、形にしていくことが今の野望です。私は宮藤官九郎さんが好きでとても尊敬しているのですが、宮藤さんといえばクドカンワールドと言われる世界があるように、私もモモコグミカンパニーワールドを持ちたいと思っていて、それが人にわかってもらえるまで頑張りたいなと。自分の作家としての色がまだよくわかっていませんが、その色が濃くなっていくように頑張りたいです。
――ワタナベエンターテインメントに入ろうと決めた理由も教えてください。
一般人に戻ってもいいと思っていたのですが、本を書いていることを知ってもらうには表に出て自分で発信した方がいいと思っていた矢先にワタナベエンターテインメントさんからお話をいただいて、文化人枠に入れてもらえるのはありがたいと思いお受けしました。
――そもそもの話になりますが、芸能界に興味を持ったきっかけは?
たまたま書店を巡っていたときにオーディション雑誌でBiSHのオーディションを見つけて、前々からなんでたくさんの人がアイドルに応募するのかなと思っていたので、よくわからないけど見に行ってみようと思ったのがきっかけで、芸能界を志していたわけではなかったです。たまたま入れましたが、下積みがない分、入ってからものすごく大変でした。
――そして、活動していく中で自分が本当にやりたい執筆業に出会えたわけですね。
作詞という場が与えられなかったら、続いて1年だったと思います。作詞を任せてもらって、自分のやりたいことできるかもしれないと思ってからは、しがみついて頑張るようになりました。
――今後、作詞もやっていきたいと考えているのでしょうか。
やっていけたらと思っています。
――作詞した曲をご自身が歌うということは?
そこはグレーにしておきたいです(笑)。可能性はゼロではないかもしれませんが、とりあえず私は小説に尽力したいと思っているので。
――最後に、ご自身のモットーのように日々大切にしている言葉がありましたら教えてください。
BiSHでよく言っていた「唯一無二」という言葉は本当に素晴らしい言葉だなと思います。この業界に残るからこそ、どこにでもいる人になってはいけないなと思っていて、自分と常に対峙している感じがあります。ほかと比較対象がたくさんある世界ですが、これからも唯一無二でいたいという思いがあり、作家としてもそういう存在になれたらと思います。
9月4日生まれ、東京都出身。国際基督教大学(ICU)教養学部卒業。2015年に“楽器を持たないパンクバンド”BiSHのメンバーとして活動を開始。2016年にメジャーデビューを果たすと、大ヒット曲を連発して各メディアで活躍。結成時からメンバーの中で最も多くの楽曲の作詞を担当。独自の世界観で圧倒的な支持を集める。“物書き”としての才能は作詞だけではなく、2022年には『御伽の国のみくる』で小説家デビュー。これまでエッセイ2冊、小説1冊の執筆を行い、7月21日には自身2冊目の小説となる『悪魔のコーラス』(河出書房)を発売。2023年のBiSH解散とともに作家活動を本格化させている。