■中島健人には自らオファー アームカバーも指定
――中島さんは、大森さんのオファーで出演が決まったとお伺いしましたが、きっかけを教えていただけますか。
中島さんはアイドルとしてすごく魅力的な方ですが、俳優としても同じくらい面白いポテンシャルをお持ちなのではと感じていました。キラキラしているだけではなく、“人間”をちゃんと見せられる方で、ちょっと器用貧乏なんじゃないかなと感じさせるところにも魅了されていました。以前から“キラキラしていない中島さん”が見たいなと思っていたんです。
――最初にそう感じたのはいつでしたか。
24時間テレビでのドラマ『ヒーローを作った男 石ノ森章太郎物語』(18年 日本テレビ)です。陰な部分を持ちながら情熱的に打ち込んでいく姿が面白くて。それまで中島さんのお芝居をあまり見たことがなかったのですが、「こんな役も似合う方なんだ」「新しい一面をもっと見てみたい」と感じました。その後も色々と作品を拝見しましたが、中島さんはどの役でも素敵でキラキラしているじゃないですか。だからこそ、そうじゃない役者・中島健人さんをもっと見てみたいという思いが募っていって。
――アームカバーにそんな思いを感じます。
アームカバーは私がト書きから指定してしまったものなので、中島さんには申し訳なかったんですけど(笑)。
――大森さんのこだわりだったんですね。
もしかしたら嫌がられるかもしれないと思ったのですが、チャレンジだと思ってやってくださったならすごくありがたいです。沙莉さんも織田さんも、こうなっていたらいいなという想像を超えるお芝居をしてくださったのですが、中島さんは一番予想外のインパクトを与えてくれました。これから先、栗橋くんも成長していくので、中島さんのどんなお顔が見られるか楽しみにしています。
■『カバチタレ!』から20年超…日本に感じること
――今作は、大森さんの代表作である『カバチタレ!』(01年 フジテレビ)と同じリーガルドラマですが、20年以上経った今とあの頃で、脚本を書いていて社会が変わったと感じることを教えてください。
『カバチタレ!』は、法律を武器にバリバリやっている栄田さん(深津絵里)に対して、希美さん(常磐貴子)さんが社会を違った視点で見せていくという、少し今回のひかりちゃんと似た立ち位置でした。2人は28歳くらいの設定で、今回のひかりちゃんも同世代なのですが、日本がかなり高齢化し、社会情勢や環境問題など取り巻く環境はかなり変わったと感じています。働く女性の環境も変わったようでいて、私が今回の題材に取り掛かったときにはまだ女性の執行官が1人もいないなど、変わっていない面もたくさんあって。日本社会全体が緊迫した状態の中で元気をなくしてしまっている気がするので、あの頃よりも「寄り添いたい」という気持ちが大きくなっています。
――確かに、日本は20年前より元気がなくなってしまっているかもしれません。そして、ちょうど今年の春に、日本初の女性執行官が誕生したんですよね。
そうなんです! うれしいですよね。お話してみたいです!
■この先のストーリーもリアルさを追求
――では最後に、今作『シッコウ!! ~犬と私と執行官~』の見どころを教えてください。
今後もいろいろな債務者、債権者の人々が登場します。栗橋くんもそれらに自ら接して変わっていきますし、ひかりちゃんも小原さんも、いろいろな事件と出会うことで成長していくので、楽しみに見ていただきたいなと思います。元執行官の方々に丁寧に監修していただき、競売や子の引き渡しの強制執行、鍵担当や運搬など執行補助者のお仕事など、この先のストーリーもかなりリアルに描けていると思います。「もし自分の身近でこんなことが起きたらどうしよう」と空想しながら見ていただけるととてもうれしいです。
1972年3月6日生まれ、福岡県出身。脚本家。演出や映画監督、小説も手掛ける。名古屋テレビ放送、フジテレビを経て、『美少女H』12話(98年 フジテレビ)で脚本家デビュー。連ドラ初脚本作『カバチタレ!』(01年 フジテレビ)が大ヒットし、2005年には『不機嫌なジーン』(フジテレビ)で第二十三回向田邦子賞を史上最年少で受賞する。代表作にドラマ『ロング・ラブレター~漂流教室』(02年 フジテレビ)、『ランチの女王』(02年 フジテレビ)、『きみはペット』(03年 TBS)、『マイ☆ボス マイ☆ヒーロー』(06年 日本テレビ)、『ブザー・ビート〜崖っぷちのヒーロー〜』(09年 フジテレビ)、連続テレビ小説『あさが来た』(15年 NHK)、『未解決の女 警視庁文書捜査官』(18-20年 テレビ朝日)、大河ドラマ『青天を衝け』(21年 NHK)、映画『カイジ 人生逆転ゲーム』(09年)、『宇宙兄弟』(12年)、『ひみつのアッコちゃん』(12年)など。