日テレ「水曜ドラマ」枠での男性単独主演は、『世界一難しい恋』の大野智(嵐)以来約7年ぶり。「女性主演じゃないといけないという決まりがあるわけではないのですが、やはり女性に共感していただける作品を考えるときに、今は女性が主人公の恋愛ドラマが細分化されて本当にいろいろありますが、自分とは関係ない環境下の主人公だったら見なくていいじゃないですか。でも、男性を主人公にすると、少し距離を置いて応援できたり、文句を言える対象になって、1つのキャラクターとしてノーストレスで見てもらえるのではないかと思い、『水曜ドラマ』の企画として出しました」と狙いを語る。
鈴木Pと赤楚の出会いは、坂口健太郎主演のドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(2019年)。「打ち上げで『赤楚衛二です!』ってわざわざ挨拶してくれて、好青年だなと思ってたら、そこから『チェリまほ(30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい)』『彼女はキレイだった』『SUPER RICH』と見ていて、すごく表情が豊かで、カッコいいのにちょっとドジっぽさのあるかわいらしさが相まっていていたのと、心の声がすごく上手だなと思ったんです。その後に『舞いあがれ!』を見たら、少し影のある役も演じられていたので、いわゆる喜怒哀楽をちゃんと見ることができた気がして、『この人だったら真ん中をやってもらえる』と思ってお願いしました」
今年は『舞いあがれ!』以降も、『風間公親-教場0-』『ペンディングトレイン-8時23分、明日 君と』とドラマ作品が続いていており、スケジュール的に厳しいと思いながらオファーしたところ、無事快諾。原作を読んでいた段階で向井くんには赤楚を想像していただけに、「断られたら実写化する意味はないと思うくらいだったので、本当に良かったです」と胸をなでおろした。
実際に撮影が始まると、「2日目ぐらいから監督と『完全に向井くんじゃん!』って話してました」と手応え。『イノセンス』からブレイクを経て、久しぶりに再会した印象を聞くと、「GP帯の主演をもっと早くやっているような印象ですが、しっかり一歩一歩進んだ先に今がある感じが、地に足がついてる感じがしていいんですよね。その生き方がとても人間っぽくて、だからセリフ一つ一つがちゃんとリアルに聞こえるし、皆さんの中にちゃんと入っていく気がします」と期待を込める。
撮影現場の様子を聞くと、「肩をぶん回すわけでも、気負いすぎるわけでもなく、視野を広く周りに目を配って、ナチュラルに真ん中にいるという感じがして、安心感があります。特に今回は、話によって恋の相手が代わるので、その演者の方は毎回緊張して現場に入るんですけど、皆さんは『赤楚さんだからすぐに打ち解けられる』と言っています」と、“座長”としての役割を果たしているそうだ。
■番組公式ページに“みんなで作っている”思いを反映
ドラマ制作志望で日テレに入社した鈴木P。その原点は、小学4年生のときに「6年生を送る会」でオリジナル演劇の脚本・演出をしたことだったという。
「当時テレビっ子で、『3年B組金八先生』と『笑う犬の冒険』が大好きだったので『笑う金八先生の冒険』ってタイトルにして、6年生が1年生までタイムスリップして、もう一度小学生をやり直すというコメディを作ったんです。人を笑わせることが好きだったんですけど、小学生なのでその対象はMAXでクラスの30人じゃないですか。でも、その劇は他のクラスも6年生もその親御さんもいるから何百人にめちゃくちゃウケたんですよ。その感覚が忘れられなくて、この最大値って何だろうと考えたときに、テレビの世界を目指したんです」
入社後、編成、宣伝、バラエティ制作などを経て、GP帯の連ドラでメインのプロデューサーを務めるのは、今回が初めて。その心境を聞くと、「小4から20年以上、本当にこのために頑張ってきたんですけど、“自分のドラマが始まるんだ”という実感がそんなにわかないんです。それは当たり前のことなんですけど、20年以上の思いを凌駕するぐらい、みんなで作っているという気持ちが強いからなんですよね」と、改めてチームの力を感じている。
それが表れているのが、番組公式ページに記載しているスタッフの名前だ。通常なら、原作、脚本、演出、プロデューサー程度だが、今作では放送で流すスタッフロール全員分を出しており、「このドラマをやれて良かったと皆さんに思ってほしいし、どんな仕事でも誰かにとっての希望になったらいいなと思うんです。自分のためだけに仕事をするには社会人って長すぎるじゃないですか(笑)。だから、スタッフ1人1人が誰かの憧れのような存在になれたらという思いがあります」と狙いを明かした。
●鈴木将大
1989年生まれ、千葉県出身。12年に日本テレビ放送網入社。編成、宣伝を経て、制作で『ヒルナンデス!』などのバラエティ番組、『あいつが上手で下手が僕で』『フレンドシップ』『消しゴムをくれた女子を好きになった。』『今日、ドイツ村は光らない』『すきすきワンワン!』『こっち向いてよ向井くん』などのドラマをプロデュースする。