■やっぱり熱量が大事やなって

――『M-1』後の寄席での活躍を期待されていた井下好井を解散したのは、そうした考えもあったんですね。井下好井の解散は昨年末でしたが、それから、お笑いファンを驚かせるようなコンビの解散が続いています。

オジオズ(オジンオズボーン)さんが年末に解散するかもって言ってて、同じ時期に解散になって、コウテイ、コマンダンテ、ゆったり感も。もうしんどいっていうコンビもあれば、何か新しくやりたいことがあるっていうコンビもあったり、単純に仲が悪かっただけかもしれないけど、やっぱり何か1個区切りがそれぞれにあったんだと思います。

――コンビの解散は寂しさがありますが、過去にもコンビからピン芸人になって、現在大活躍している人がたくさんいるので、楽しみな気持ちも大きいです。

僕、コンビを解散してピン芸をやってる人たちを下に見てるというか、ネタも作らずにふらふらしてたり、そのままやめていく人もいてたり、漫才をやってる自分と比べて、何をやってんねんって思ってる時期が一瞬あったんです。

でも、その中にもリスペクトできる人がいて、その人たちは芸人を辞めずにピンで戦い続けて、今では食えるようになってる。そのすごさがいま改めて分かるし、そういう人たちみたいになるには、やっぱり熱量が大事やなって。だから、やりたくないけど、1万5,000円もらえるしな、って、お金のためにやる仕事はコンビ時代にめっちゃやってきたし、今後はそれをなしにして、やりたいことができるように全振りしたい。そのやりたいことっていうのが、『N93』なんです!

――やっぱりそこに(笑)。

なんかもうそればっかり言い過ぎて、ウソくさいな……でも、そうなんです。マネージャーに「この夏か秋に大きい仕事が入るかもしれません」と言われても、「その仕事が入ったらラジオのスケジュールはいけるん?」って話はしてるんですけど、こんなに喋ってて負けたら気まずいよなあ(笑)。

■言わんと来ない

――好井さんのなりふりかまわない感じはラジオでも面白くなってるし、カッコいいなと思うんです。何かを欲しがる姿勢を見せない美学もあるじゃないですか。

言わんと来ないというか。恋愛でも「好き」って言わんかったら、その子はまず自分の気持ちを知りもしないわけじゃないですか。かわいい人なんて絶対に彼氏がいるんですけど、彼氏がおるからって諦めてたらお付き合いできない。一旦振り向かすために「ちょちょちょ(ちょっとちょっと)」ってやらんと。

それと同じで、ラジオ局の人たちにも「ちょちょちょ」ってやらんかったら、普通は舞台で生きてた人間には声はかからない。でも、「ラジオやりたい」って言ってるやつがおったら、一応引き出しに入れとこうかってなると思うんですよ。それでもしラジオパーソナリティを探してるってなって、その条件に合致したら、呼んでもらえると思うから、いろんなところで言うようにしてました。

――それでラジオを担当するチャンスを実際につかんだ。言霊(ことだま)の力を感じます。

言霊の力……もうこの記事のタイトル、「言霊の力」でいいんじゃないですか? 「力」はカタカナで頼みます。

――検討させてください。

ダサいか(笑)。でも、自分の周りにいる素敵な先輩方もやっぱり、それは言ってました。(ピース)又吉さんは自分が好きやと思ったことはちゃんと表現するようにしてたし、ノブコブの吉村さんもそうですね。若手時代から「俺はMCをやるんだ」「テレビに出るんだ」と言ってて、周りには「どうやってテレビ出るねん」「若い子に人気あるだけやろ」とか言う人もいたんですけど、そう言ってた人たちは全員芸人をやめて、吉村さんの一人勝ちになってる。