昨年末、お笑いコンビ・井下好井を解散した好井まさお。現在はピン芸人、俳優として幅広い活動を行っているが、自身がパーソナリティを務めるTBS Podcast『N93 好井まさおの「今、何してる?」』(毎週水曜19:00〜配信、以下『今なに』)には特に強い思いを持っているという。

なぜ、好井がラジオという媒体にこだわるのか。その動機に迫った今回のインタビュー。前編では、生粋の喋り好きという性格、“ラジオの帝王”こと伊集院光ら憧れの芸人像、同期であるパンサー・向井慧からの後押しなどのキーワードが浮かび上がった。

そして、今回公開する後編では、一番近くで好井の変化を見守る家族の存在、15年にわたり力を注ぎ続けた漫才師時代の葛藤、自身にとって“神様みたいな存在”だという千原ジュニアからもらった大切な言葉と、ラジオという特別な場所と全力で向き合う彼の人生観や職業観が見えた。

  • 好井まさお 撮影:冨田味我

■コンビ解散してから、いい顔してるね

今年4月にスタートした、TBS Podcastの新企画『N93』。この企画では好井のほか、きしたかの、パンプキンポテトフライ、カラタチ、金の国がそれぞれ、月曜から金曜までの各曜日に配信される番組を担当。各番組のPodcastやYouTubeの再生数、イベントグッズの販売数、スポンサー獲得を独自にポイント化した結果が毎月番組内で発表され、年間を通して、もっとも高いポイントを獲得した芸人が、TBSラジオの地上波枠を勝ち取ることができる。

――金属バットや囲碁将棋と親交の深い好井さんが語る『THE SECOND』の回も聴きごたえがありました。大会評やネタ評ではなくて、あくまでも好井さんの日常の一コマと言いますか、他では聴けない切り口のお話が新鮮でした。

『THE SECOND』のことを喋るってなったときに、ネタに関しては「もちろんあなたは喋ってください」って人と、「誰が喋ってんねん!」って人がいるなと、自分が『M-1』に出てる頃に思ってて。もし、自分が『THE SECOND』のことを喋って、そんな風に思われるのはイヤやけど、金属バットと囲碁将棋さんにはすごい情があるというか、体重が乗っかるんで、やっぱり喋りたいじゃないですか。だから、ネタの内容に関しては一切喋らずに、『THE SECOND』があった日の自分のことを喋るって決めて、ああいう形にしました。

――トークに登場する娘さんがかわいくて面白くて、ほっこりとしました。すごくいい子だなと思いますし、好井さんとの関係性も素敵です。娘さん、大人っぽいですよね。

ませてるんですかね? でも、娘が思ったことを家で吐き出せるような環境は作りたいと思ってて、そのために、親がストレスを溜めてるのは良くないじゃないですか。だからこそ、このラジオは終わらせたくないんです!

――娘さんのためにも(笑)。

結局そこに戻るんですけど(笑)。でも、「コンビ解散してから、いい顔してるね」って奥さんが言ってるんです。言い方が難しいんですけど、漫才してるときは相方が嫌いでストレスやったんかって言ったら、そんな一色の話じゃなくて、何色もあるというか。

映画に出て、合間にネタ書いてるのに、相方とこのネタ全然ソリ合わんやん、とか。前日めっちゃウケたネタで賞レースの結果があんまりやった、1年間何しててん、とか、色々なことが重なったんです。15年頑張ったものが評価されんかったってなったら、その考え方を一回リセットせなあかんなと。

60歳まであと20年ないくらいなんですけど、20年間MAXでバリバリ動くことって、難しいと思うんですよ。だから、『M-1』だけに向けて全部を生きるような一年じゃなくて、ホンマにやりたいことでストレスなくお金もついてくるっていう環境をこれからは目指したいなって。

――そこに向かって走っているから、ご家族から見ても好井さんが生き生きとしている。

楽しいですよ、漫才やって仲良い芸人とわちゃわちゃしてるのは。楽しいですけど、それを何年もやってきて、何百ステージ立っても、現状変わってないですから。これは悲しいお別れをせなあかんやろなと思ったんです。でも、またコンビでライブ出たいなと思ったのは1日くらいでしたね。薄情ですけど、今は目の前の仕事が大切ですし、仕事をもらうんじゃなくて、自分で仕事を作れるようになっておいたほうがいいなと。