昨年9月の開幕戦で先制ゴールをゲット。ソシエダを勝利に導き、その後も攻撃陣の一角で躍動した久保は時間の経過とともに、本拠地を置く町サン・セバスティアンで受け入れられていく。

そして、カタールW杯に臨む日本代表メンバーにも順当に選出される。このときの久保は「いまの状態ならば自分を押し通せて、周囲からも認められるぐらいの個の力がある」という思いを胸中に秘めていた。新天地ソシエダでの充実感が、自信に変わりつつあった証といっていい。

しかし、待っていたのは、例えるならば天狗の鼻をへし折られるような結果だった。

ドイツ、スペイン両代表とのグループリーグで先発を果たすも、ともにハーフタイムでの交代を告げられた久保は、日本中を熱狂させた後半の逆転劇をベンチで見届けた。クロアチア代表との決勝トーナメント1回戦にいたっては、発熱による体調不良で欠場を余儀なくされた。

ホテルからテレビ越しに応援したクロアチア戦はPK戦の末に敗退した。森保ジャパンの力になれなかったカタール大会を、久保は「半分は黒歴史みたいな大会でした」と自虐的に振り返っている。

「よく言えばチームのために戦えたけど、悪く言えば自分のやりたいプレーができなかった。圧倒的な個の力がないと厳しいと思い知らされたし、自分の見積もりが甘かったというか、勘違いをしていた。次のW杯で僕は25歳になっている。25歳ならば代表の中核になっている選手がどこの国にもいる。自分がそういった存在になれるように、最も大事なのは結果だと言い聞かせていきたい」

涙ながらに誓った決意と、今年に入ってからの大活躍は決して無関係ではないだろう。久保は後半戦だけで7得点をマークし、ゴールした全9試合でソシエダが勝利する不敗神話を打ち立てた。

クラブの公式ツイッターで随時公開されたインタビューに、久保の充実ぶりが反映されている。聞き手から好調の秘訣を聞かれた久保が、こんな言葉を返したことがあった。

「みんなが僕を信頼してくれている。監督から、チームメイトから、何よりもサポーターから。ピッチ上でこれほど信頼されていると感じられることは、プロになって以来なかったと思っています」

プロサッカー人生で相思相愛のクラブと巡り会える確率は決して高くない。しかし、完全移籍でソシエダに加わった決断に、老若男女の誰からも愛される陽気なキャラクター、そしてコミュニケーション能力を融合させながら、久保は100%の実力を発揮できる環境を自らの力で手繰り寄せた。

そして、ソシエダもリーグ戦を4位でフィニッシュし、新シーズンのチャンピオンズリーグ出場権を獲得した。ヨーロッパでプレーする選手ならば誰もが憧れる最高峰の舞台へ。久保は「22歳になるシーズンで戦いたい」と思い描いていた、サッカー人生の青写真をも鮮やかに成就させた。