とても柔和な雰囲気を醸す田村と、チャキチャキの江戸っ子である佳代とは、真逆のように思えるが、役に対してどんなアプローチをしていったのだろうか?

「私は誰かのコピーは絶対にしないと、自分の中で決めていますが、誰かと誰かを混ぜたものは、自分のお芝居になるとも思っています。例えば、あのドラマに出ていたあの役のイメージで行こうとなると、どこかで自分が真似をしているような感覚になりますが、自分の幼馴染みにこういう子がいたなとか、この作品のこの女優さんのお芝居の要素をプラスしたりとか、いくつかの役を混ぜて、自分の中に落とし込んでやればいいのかなと」

さらに、「佳代のように自分と役がかけ離れている場合は、特にそうします。私の友達で佳代のようにチャキチャキしている子を何人か入れてみたし、私は片桐はいりさんが好きで、カメラの前で演劇的な動きをしても、それが成立してしまうところが本当に素敵だと思っているので、今回は(別の作品の)片桐はいりさんのシーンを何度も見ました。佳代もとてもコミカルな役なので、片桐さんの表情が、いつどこで切り替わったのかとか、どの場面で声を発したのかを、0.1コマのタイミングでチェックして、すごく研究しました」と語った。

入念なアプローチで臨んだ佳代役だが、今回、朝ドラに出演したことで、女優として新しい目標ができたという田村。

「私はもともと舞台女優を目指していて、これまで舞台女優としてやってきました。でも、映像が嫌いというわけではなく、身近にあったのが舞台で、映像はまったく次元の違う世界だと思っていました。そこから映像の仕事をいただくようになっても、『いいのかな、ここにいて』みたいな気持ちがあったのですが、今回、周りのみなさんが温かくて、とても自由にやらせていただけました」と感謝する。

そして「いただいた役がこれだけ個性的な役だったので、私自身も1個脱皮ができたし、今後自分がどんな女優さんになって、どんなお芝居をしていきたいのかを、改めて考えるきっかけにもなりました。私は小林聡美さんや、片桐はいりさんなど、“個性派”と呼ばれる女優さんが子どもの頃から大好きだったので、私もそういう女優さんになりたいという明確な夢みたいなものもできました」と目を輝かせる。

最後に、朝ドラ好きならではの田村から、視聴者へ向けてのメッセージをもらった。 「朝ドラは、私が子どもの頃、朝ごはんを食べながら観ていた思い出があって、朝ドラを見ると、1日のスタートがとても晴れやかなものになるという印象があります。まるで、心のラジオ体操みたいな感じなので、みなさんも朝ドラで、毎朝、心のラジオ体操をしてもらい、心を整えて、いい1日を送っていただけたらうれしいです。また、私自身も、そうやって日々を楽しく過ごせたらいいなと思っています」

■田村芽実(たむら・めいみ)
1998年10月30日生まれ、群馬県出身。アイドルグループ・アンジュルム(旧・スマイレージ)の元メンバー。2016年に5月30日に日本武道館公演をもって同グループを卒業。卒業後は、女優・ソロ歌手として活躍。近年の出演舞台にミュージカル『グリース』(21)音楽劇『クラウディア』(22)、ミュージカル『ヘアスプレー』(22)、ブロードウェイミュージカル『MEAN GIRLS』(23)など。読売新聞夕刊popstyleにてコラム「ひめごと」を連載中。6月21日より音楽劇『ダ・ポンテ~モーツァルトの影に隠れたもう一人の天才~』に出演。

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