城田にとってサグラダ・ファミリア聖堂はスペイン時代で過ごした幼少期を思い出させてくれるノスタルジックな存在である一方で、もう一つ強く惹かれているのが、前述していたように完成されていないアンバランスさだという。
「サグラダ・ファミリアを見ていくと、ものすごく精巧に作られているのですが、設計図はガウディの頭のなかにしかない。しかもそれが完成していないということが面白い。完成しているものはもちろん素晴らしいのですが、未完成が故の儚さもあるので」
完璧に見えて、そうではないサグラダ・ファミリア聖堂の魅力。城田自身も、“完璧ではない”ということが、エンターテインメントの世界で生きていくうえでは、非常に大切なことだというのだ。
「僕は、自分がやっていることに関して一度も完璧だったと思ったことはありません。完璧だと思った瞬間、そこで終わってしまうような気がして。僕は今、ミュージカルなどを演出したりしていますが、正解なんてないし、いつも『もっとこうすればよかった』と思うことだらけ。常に追求していくことが進歩だと思うんです」
決して完璧だと言って終わらせない――。まさに城田とサグラダ・ファミリア聖堂の共通点が垣間見えるような発言だ。
「サグラダ・ファミリアという建築物も、きっとガウディのなかでそんな思想があるのかなと。完成させるというよりは、どんどん深く築いていくみたいな。そこにシンパシーを感じています」
「僕は人生って、すごろくゲームをやっているような感じがするんです」と語った城田。生きている限り、サイコロを振り続け、マイナスのマスに止まったり、プラスのマスに止まったり、ボーナスマスに止まったり……。
「みんな平等にいいことも悪いこともあると思うんです。だからこそ悩んでもしょうがない。人は完璧じゃないから。そこを受け入れて、進化させていく。そういう生き方を死ぬまで続けていきたいと思っています」
常に進化し続けるサグラダ・ファミリア聖堂と城田のマインド。話を聞けば聞くほど、同展覧会のガイダンスを城田が担当することは、大いなる必然だったような気がする。
2003年に俳優デビュー。以降、テレビ、映画、舞台、音楽など幅広く活躍。近年の主な出演作に、NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(語り手)、Amazon Primeドラマ『エンジェルフライト~国際霊柩送還士~』、映画『コンフィデンスマンJP英雄編』等がある。ミュージカルでは、第65回文化庁芸術祭「演劇部門」新人賞等、様々な賞を受賞。2016 年に『アップル・ツリー』で演出家デビュー。7月開幕のミュージカル『ファントム』では、演出・主演に加えてもう一役を務めるという異例の三刀流に挑む。