第4話では新たに6号車の乗客が登場した。二見氏は「6号車の人たちは村みたいなところで暮らしているという設定なので、千葉の山奥に村を作ってロケをしました。外装自体はいろんな地形を利用し、あとはCGで合成して6両目を作っています」と解説。

野中氏は「車両自体はほぼ5号車と変わらないけど、運転手席があるので、そこはパネルを追加して、変わったように見せています。台本のト書きに『仕切りがあって、そこに住んでいる』とあったので、自然木で電車の中を区切り、5号車とは全く違う印象の作りにしました」と語る。

また、5号車と6号車の違いを出すうえで、効果的に使われているのが風景を映し出す幅17メートル、高さ4メートルのLEDパネルだ。

「5号車では樹海の風景をLEDで表現していますが、その利点を生かして、6号車では、違う風景を映しているから、電車自体は同じでも、全然違う場所にあるように見えます」

二見氏も「今回は電車の天井がパカッと外れるので、真俯瞰に入るという面白い撮り方もできました」と、いろいろな角度からの撮影にも臨機応変に対応できるセットならではの利点も明かした。

美術部が作り込んだセットについては、山田たちキャストからも大きな反響があったという二見氏。

「みなさんがオープンセットに入るなり『わあ!』となりました。その後、オープンセットとスタジオのセットとで、同じシーンを行ったり来たりして撮影することになりましたが、オープンセットがあまりにも良くできていたので、最初は『スタジオだと電車の片面だけになっちゃうから、なるべくオープンセットで撮った方がいいかも』という話が出ました。でも、その後、緑山スタジオのセットに入ったら、主演の山田さんが「すごい。テレビドラマのクオリティを超えてる」と言ってくれたのが聞こえてきて、すごくうれしかったです」

二見氏はセットだけではなく、小物や小道具などについても、サバイバル監修と話し合いながら作り上げていったと言う。

「たいまつがよく出てきますが、木の棒にタオルを巻いて火をつけても、油が染みてないとすぐに燃えつきちゃいます。そこはサバイバル監修の方と話して、車輪のパーツに塗ってある潤滑油のグリスを拭い取るという設定にしました。実際にそういうカットも入っています」

とはいえ、その油がずっとあるというのも不自然ということで、その後もサバイバル監修の意見を取り入れて、たいまつをアップグレードさせていったというから芸が細かい。

「たいまつって漢字で“松”に“明るい”と書きますが、実際にファットウッドという、松ヤニがたくさん染み込んだ木があると聞きまして。それを燃やすだけで、ずっと長い間、燃え続けるんです。その木を見つけたという設定にして、途中からはたいまつとなる竹筒の上にファットウッドがついている形のたいまつになっています」

セットから小道具まで、大掛かりな作り込みが必要だったため、本作ではあらかじめ、全体の世界観を表すコンセプトアートを用意したことが功を奏したと言う二見氏。

「最初に監督やプロデューサーにコンセプトアートを見せて、こういう世界観でやりたいということを、美術部からも提案してやっていけたことが良かったです。ビジュアル面でいうと、むしろこちらから発信したもののほうが多かったので、そこは我々としても自信を持っています」と胸を張る。

二見氏はさらに、オリジナル脚本ならではのやりがいをこう明かす。

「原作があるドラマは迷った時に漫画などを読み直します。でも、今回はそれがないから、台本と企画書を見ますが、そうなると監督やプロデューサーと話し合う時間が長くなります。そこがまたよくて、自分たちの意見が取り入れられやすくなるから、そういう良い文化の中で、すごくいい作品作りができた気がします」

美術部の職人技が冴えるセットや小道具たちは、きっと山田たちキャストの熱演をより一層引き出しているに違いない。キャストとスタッフが一丸となって作り出した渾身のドラマを引き続き堪能してほしい。

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