「Fun Time」宇宙は面白い時期
―これから宇宙旅行に行く人がどんどん増えるでしょう。宇宙旅行の醍醐味は?
ペギー:楽しめることはたくさんあります。最大の喜びは宇宙から地球のパースペクティブ(眺め)が得られること。宇宙全体の中に自分が存在すること、この惑星の上ですべての人が生きていて、いかにそれが貴重であるかを実感できます。世界中のさまざまな人たちが地球という1つの宇宙船に、一緒に乗っていることを感じられることです。
―より安価な価格で、より多くの人が宇宙に行けるのはいつごろになるでしょうか?
ペギー:チャンスはたくさんあると思います。Axiom Spaceによって宇宙は多様化するし、たくさんの人がもっと宇宙に行けるようになるでしょう。Axiomの商業宇宙ステーションでは、研究や製造ができます。たとえば製薬企業が研究したいことがあるかもしれないし、今まで宇宙飛行士を持っていなかった国が、訓練して商業宇宙ステーションに宇宙飛行士を送ることができるかもしれない。(Axiomだけでなく)他の企業も商業宇宙ステーションを作ろうとしていて、それぞれに目的をもっている。宇宙で働く人も増えると思います。宇宙は今、広がろうとしている。とても面白い時代です。ロケットや人工衛星がたくさん打ち上がって、関わる人がたくさんいる。Fun Time、面白い時期なんです。
―地上ではさまざまな問題がありますが、宇宙人が行くことで課題解決にどう役立ちますか?
ペギー:宇宙に行くことで地上での課題に対して、全然違う価値観や物の見方を獲得できます。それによって課題が払拭されたり、解決に繋がったりする。たくさんの人が宇宙に行くことでそうした違う価値観を地球の人々に伝え、貢献できると思っています。
ジョン:ISSとパートナーが積み上げてきた歴史がある。今後、より宇宙利用の裾野を広げ、宇宙で得られる多くのリソースそのものが地球の人たちに恩恵をもたらすと思っています。
Ax-2ミッション ー サウジアラビア初の女性飛行士が搭乗、多彩な科学実験
ペギーさんとジョンさんのインタビューは1月末にJAXA筑波宇宙センターの「きぼう」訓練施設内で行われた。その後、Ax-2ミッションに参加する追加の2名が発表。サウジアラビアのアリ・アルカルニ氏、ラヤナ・バルナウィ氏がミッションスペシャリストとして参加することになった(彼らも筑波宇宙センターで一緒に訓練を受けていた)。
Axiom Spaceによると、彼らはサウジアラビア国家宇宙飛行士プログラム初のメンバーだ(サウジアラビア人として初めて宇宙に行ったのは1985年、スルタン王子によるスペースシャトル飛行)。サウジアラビアは「ビジョン2030」改革アジェンダのもと、2018年に宇宙委員会を発足させた。サウジアラビア人の女性が宇宙に行くのは今回が初めてになる。
Ax-2ミッション中には20以上の多彩な実験が行われる予定だ。例えば幹細胞の生成実験。微小重力環境が幹細胞の大量生産をより簡単、かつ効率的にすることができるかどうかを調査するための研究が行われる。Axiom Spaceによると、人工多能性幹細胞 (iPSC) が初めて宇宙飛行士によって宇宙で製造され、地上の再生医療に貢献できる可能性があるという。
カリフォルニア大学サンディエゴ校と連携した実験では、Ax-2の乗組員は宇宙で人間のがんの治療法をテストする最初の人になる予定だという。また、マサチューセッツ工科大学(MIT)と連携した実験では、宇宙飛行士用の船内アクティビティスーツを着用する。このスーツは筋萎縮などを軽減するために開発されており、将来の月や火星ミッション中の運動を補う。また、微小重力下で初めて人工的に雨を発生させる。これは月や火星の居住地で人工雨を生成するための技術開発に役立てられる。
日本の実験もある。JAMSSの実験で、匂いを検出するという。収集されたデータは匂いを視覚化し、宇宙旅行の生活の質の向上に役立てられるだろう。
宇宙飛行中にはサウジアラビア王国の学生が地上実験に参加するスペースカイト(凧)などの実験も計画されている。非常に盛りだくさんのミッションだ。
元NASA宇宙飛行士が民間の飛行士となって、民間人をガイドし、ISSに戻り宇宙の利用拡大に貢献する。ペギーが4回目の飛行でどんな手腕を発揮してくれるか、楽しみに注目したい。