山田裕貴主演のTBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(毎週金曜22:00~)で、自己中心的な性格のネイリスト・渡部玲奈役を演じている古川琴音。女優デビューから5年、映画やドラマなどの話題作で確実に爪痕を残してきた古川は、現在放送中のNHK大河ドラマ『どうする家康』での歩き巫女・千代役でも熱い視線を浴びている。そんな古川に、役作りや女優業との向き合い方について聞いた。
都心へと向かう電車の一両が、いきなり未来の荒廃した世界にワープしてしまい、乗客たちがそれぞれの知恵を駆使して、過酷なサバイバル生活を繰り広げるという本作。カリスマ美容師・萱島直哉役を山田、正義感溢れる消防士・白浜優斗役を赤楚衛二、高校の体育教師・畑野紗枝役を上白石萌歌が演じている。
玲奈について古川は「自由奔放でちょっと非常識だったり、協調性がなかったりしますが、思い切った行動をとることは楽しくもあります」と好意的に受けとめている。
「周りに上手く馴染めないし、孤独を抱えているようなところは若干共感するし、玲奈の寂しい心を感じて自分も悲しくなったりもするので、気持ちがジェットコースターみたいな感じです。今までこういう役は演じてこなかったなと。でも、玲奈は自分の欲望のままに動いているだけで悪気がなく、純粋な感情で動いているので、総じて楽しいです。ただ、強い言葉やキャラクターに引っ張られがちなので、玲奈が本心で思っている弱い部分をどこでどう出せるかを考えながら演じています」
玲奈の衣装については、古川の意見も反映されている。もともとはカラフルで今とは少し違う衣装だったが、そこに古川の提案が入り、今の形になったそうだ。
「玲奈にとってのファッションは“武装”だと思っていたから、玲奈が『自分はこういう人間です』というものを強く発信したもの、彼女が持つ毒の部分が見える衣装がいいという話を監督としました。それで、大胆に肌を見せて、アクセサリーもたくさんつけて、パンクの精神が見えるようにすることに。玲奈の内面と外見がマッチするような衣装に決まりました」
本作と併行して、『どうする家康』も撮影中の古川。演じているのは、信玄の命で諸国に潜り込み、諜報活動を行う千代役だが「声の出し方や言葉使いなど、ギアが全く違う役なので、切り替えが難しいと思ったことはないです。それぞれの役でのヘアメイクや衣装をまとうと、自然と完全に切り替わるなと思います」と語る。
古川のドラマ初出演は、2018年のTBS系ドラマ『義母と娘のブルース』。それから5年、着実にキャリアを積んできて今に至る。自身の変化した点や成長した点について尋ねると「まだわからないです。それよりも、もう5年もやってきたんだ! という驚きの方が強くて。何か変わったかと言われても、まだまだできていないことの方が多いし、もっともっと自分自身と役をつなげたい、役と自分を一体化させたいと思いますが、まだまだそこにまでは至ってないかなと思っています」と述懐。
女優業への向き合い方については「良いことなのか悪いことなのかまだわからないのですが、ちょっと自分自身を客観的に見られるようになってきている気がします。そうするとお芝居をした時、心でカバーできないことを形にして逃げてしまうような計算が働くようになってしまう。そこは最近の悩みではあります」と苦笑い。
「もちろん、台本の読み込みは昔よりもどんどん深くしていきたいのですが、お芝居をしている時は、初心を忘れずというか、自分に制限をかけたり、何か予想をしたりせずにできるほうがいいなと思っています」と襟を正す。
玲奈役を経て得たものも。「今回チャレンジしたのは、声のトーンをいつもより変えてみることでした。でも、いつもの自分の振れ幅で話してないので、なかなか感情表現が難しいなと思っています。あとは、玲奈の猪突猛進ぶりというか、玲奈は考えるよりも先に行動するタイプなので、『なんでもいいからやってみよう』というパワーを自然にもらえている気がします」と明かした。
ということは、古川自身、猪突猛進タイプではないのか? と聞くと「私は半々で、どっちにも振り切れてないです」と答える。
「例えば、今この仕事をしているのは、衝動で今の事務所に応募したからですが、些細なことでは臆病でもあります。今、このタイミングでこれをしていいんだろうか? と、考えすぎて動けなくなることもたくさんあるので。だから、これからはどんどん馬鹿になって進んでいけたらなと思っています。そっちの方が、女優としての進み度合いがスピーディーなんじゃないかと思いますし」