TBS系金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(毎週金曜22:00~)で畑野紗枝役を演じている上白石萌歌にインタビュー。本作での役作りや、主演の山田裕貴をはじめ、赤楚衛二、井之脇海らとの共演について話を聞いた。
本作は、都心へと向かう電車の一両が未来の荒廃した世界にワープしてしまい、電波が通じないうえに水も食料もない極限下で、乗客たちが生き抜くためのサバイバル生活を繰り広げる物語。この電車に乗り合わせた乗客で、メディアでも活躍するカリスマ美容師・萱島直哉役を山田、正義感溢れる消防士・白浜優斗役を赤楚、高校の体育教師・畑野紗枝役を上白石が演じている。
SNS上でさまざまな考察が飛び交っているが、上白石もコメントを見て楽しんでいるそうだ。
「思った以上にいろんなことを考察してくださっていて、そんな細かいところまで見てくださっているんだなと。すごく丁寧に作っているのが皆さんに届いているなという実感があります。1話の冒頭の私が赤ちゃんを抱いてホームを走っているシーンは、すでにいろんな考察が出ていて、そんなところまで考えて見ていらっしゃるんだなと思いました」
上白石が演じる紗枝は、教師としての経験が浅く、気合と元気が空回りしてしまうこともあり、いつも他人からの見られ方を気にして笑顔を取り繕ってしまう心根の優しい女性。演じる際には「柔軟な心」を意識しているという。
「赤楚さん演じる白浜さんと同じように乗客の皆さんの調和を保ったり、みんなが安全にいられるように意識して振る舞う立ち位置ですが、誰かの命やいろんなことに責任を持てる、そして人のことをいつも思いやれる人だと思っているので、誰かの言葉を受け取るときの視線をなるべくその人に寄り添えるように。柔軟な心で新鮮に受け取れるように心がけています」
山田とは、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』(22)で共演したばかり。上白石演じる歌子の姉の夫・博夫役を山田が務めていたが、「姉の旦那さんだったので、親戚のような安心感を勝手に抱いています」と言い、演技についても絶大な信頼を寄せている。
「以前から職人だと思っていて、役を自分の中にその期間中ずっと住まわせ、カメラが回っていないところでも直哉でいるような佇まいを現場で見ているので、やっぱりこの方は役を自分のものにしていく方なんだなと思いました。そして、山田さんはずっと現場を俯瞰で見ていて、役者でありながら助監督みたい。たくさん相談にも乗っていただいていて、頼らせていただいています」
また、直哉が崖から落ちそうになった1話のシーンで山田の演技に引き込まれたという。
「私と優斗が直哉を引き上げたあとの山田さんの表情がどうしても忘れられなくて。疲れたという表情なのですが、本当に死ぬかもしれなかった自分と、引き上げられて生きている自分の“生きてる実感”みたいなものをものすごく体現されていて、山田さんのお芝居のすさまじさというか熱量を間近で感じ、最後まで山田さんについていきたいなと思いました」
キャストもスタッフも一つ一つのシーンに情熱を注いでいる現場で、上白石もより良いシーンにしたいという強い思いを持って撮影に挑んでいる。2話で紗枝が直哉に「あなたがどういう人かわかりました」と声をかけたシーンで、持っていた花を直哉に渡し方には上白石の提案が加わっていたという。
「花を直接渡そうか迷ったんですけど、直接ではなくて岩に置いて渡してみたら直哉がそれを地面に植えてくれて、紗枝の愛情や直哉の優しさが見えたいいシーンになったかなと思ったので、渡してよかったです。直哉は孤独な人なので、その孤独に寄り添いますよ、あなたの本当の姿が見たいですという、お近づきの印じゃないですけど、優しさとして渡すのはありなのかなと思って渡しました」