そして、本作に参加したことで海外の現場の熱量に圧倒されたという。

「クルー、スタッフ、一人ひとりが命をかけて参加していると思わされることがたくさんあって、必死に取り組んでいる姿がいいなと思いました。普段一番気合のある僕が押されているのかもしれないというくらい、みんなの気合が常にすごかった。殺気に近い感じで怖かったですが、僕も負けじとぶつかっていきました。皆さん気づいたことやおかしいと感じたことがあればすぐ言いますし、そういうチームがいい作品を作れるのだと思います」

ハリウッドの現場は「プロしかいない」と新田は語る。

「日本はプロだけではなく、僕も全く芝居ができないときに作品に入らせてもらいました。それは日本特有だと思います。海外はプロしか雇われないですし、実力がなければ雇われないので、本物を見させていただいた感じがします」

そんなプロ集団で座長を務め、重圧に押しつぶされそうになることも多々あったという。

「毎日不安で、吐きそうでした(笑)。ただただ必死に頑張って取り組み、完成した作品を見たときは、よかったなと。作品は超一流ですし、これが日本から生まれたと考えるとものすごいことだと思います」

この物語は、『聖闘士星矢』の前日譚であり、星矢の成長が描かれているが、新田自身も本作に参加したことで成長を遂げた。

「恵まれたトップの環境でお仕事させてもらって、役者としての考え方など大きく変わりました。時間やお金のかけ方が違い、そして、いつもやる気だけは自信があった自分がもしかしたら負けているかもしれないと思わされるスタッフの気合……世界はこういう現場なのかと。役者として、こういう現場で死にたいと思いました」

そして、「こんなに恵まれた現場はないし、日本を出なければ絶対に味わえないような経験ができて、この経験が宝物になりました」としみじみ。「自分の未熟さも感じました」とも言い、「まだ足りないと気づけたことも含め、4カ月間でたくさん成長できたなと感じています。この経験を生かしてよりよい大きな役者になっていきたいと思います」と力を込めた。

日本と海外の違いを感じたものの、日本も海外のようにならなければいけないという危機感は「全くありません」ときっぱり。

演技経験の少ない人を起用するということも含めて、「日本には日本のやり方がある」と感じたそうで、「日本で必要とされているものとハリウッドで必要とされているものは明確に違うので、日本では日本のやり方でやりますし、ハリウッドはハリウッドのやり方でやります」と語った。

  • 聖衣をまとった新田真剣佑演じる星矢の勇姿をとらえた『聖闘士星矢 The Beginning』本ポスター

■父・千葉真一さんから受け継いだもの

今後については、「作品はタイミングと出会いだと思うので、そのときに出会えた作品を精一杯やるだけです。どの国の作品であれ、巡り合えた作品は一生懸命やらせていただきたいと思っています」との考え。

日本の作品にも変わらず参加していくつもりだが、本作を経験したことで海外作品への意欲は増したという。

「海外でより多くの作品に出演したい。日本の現場でいろいろ学ばせてもらったので、次は海外で、まだ想像もできないような経験をして、日本では得られないものを得ていきたいと思います」

アクション監督のアンディは新田を大絶賛。「私はこれまでにジャッキー・チェンやドウェイン・ジョンソンなど、多くのアクションスターと仕事をしてきましたが、真剣佑は最高峰に位置すると思います。彼は若いですが、すでに多くの経験を持っていますし、そもそも彼は父である世界のアクションスター・千葉真一さんのもとで育ったのです。才能も技術も規律もすべてが揃っている。絶対的に優れた俳優だと言えます」と太鼓判を押した。

アンディの言葉に新田は恐縮しつつ、父・千葉真一さんからの影響について「まず、受け継いでいるものは血ですね」とした上で、幼い頃から空手などに取り組んできたことも「やってきてよかったなと。それが今回のようなアクションに生きています」と実感。

さらに、「アメリカで生んで育ててくれたことは本当に親に感謝しています。それがあったからこそ、こういう機会につながったので」と語った。

最後に作品を楽しみにしているファンに向けて「こういう作品が日本から生まれたということを噛みしめて見てほしいです」とメッセージ。また、英語の大切さを感じてもらうことも願っており、「これを見た20代に期待しています。20代の方たちの子供に英語を学ばせてほしい。英語の大切さ、そして世界の規模を感じてほしいです」と熱く語っていた。

■新田真剣佑
1996年11月16日生まれ、アメリカ・ロサンゼルス出身。『ちはやふる -上の句-/-下の句-』(16年)で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞受賞。映画『ちはやふる-結び-』『パシフィック・リム:アップライジング』(18年)、『十二人の死にたい子どもたち』(19年)、『カイジ ファイナルゲーム』『サヨナラまでの30分』(20年)、『ブレイブ-群青戦記-』(21年)、『鋼の錬金術師』シリーズ、ドラマ『同期のサクラ』(19年)、『イチケイのカラス』(21年)などに出演。Netflix『ONE PIECE』、ディズニープラス『House of the Owl(仮題)』が2023年配信予定。

(C)2023 TOEI ANIMATION CO, Ltd. ヘアメイク:いたつ スタイリスト:櫻井賢之[casico]