本作のタイトル「幸運なひと」には、人は病だから不幸になるわけでないという願いも込められており、自分は幸運だと叫んでいる人たちの物語でもあるという。
多部は、このタイトルに決まったとき驚いたそうで、「この物語で2人は幸運だったのかなと思いますが、そうは思わない人もいるかもしれないし、挑戦的なタイトルだと思いました」と話した。
だが、多部も自分のことを幸運だと思うことは大事であると感じているようで、自身について「私は幸運な人だと思います」ときっぱり。「そう言わないと自分がかわいそうじゃないですか」と笑った。
そして、「自己肯定感は本当に大事」だとコロナ禍で改めて感じたと言い、「コロナになって皆さん気持ちが沈みがちになったと思いますが、そういうときに自己肯定感が高いか低いかで気持ちが変わってくる気がしました」と語る。
また、「基本的に自分に期待していない」と告白。「自分はこれができる」と思うこともなく、だからこそ何かできないことがあって苦しむこともないという。
さらに、「何か失敗したら何かのせいって思うようにしています」と明かし、それも幸せに生きていくための術のようだ。
「相手や何かを責めるということではなく、私だけが悪いわけではないと思うように。それくらいの気持ちでいたほうが気持ちが楽ですし、自分のメンタルを守るにはそれも大切なことかなと思います。もちろん自分が悪いときは悪いと反省しますが、全部のことに自分が悪いと思っていたらつらいですし、それくらい強くいないと生きていけないなと思います」
こういった達観した考えは、いろいろなことを経験していく中で自分の心を守るために行き着いたのかと思ったが、「性格はずっと変わってないので昔からだと思います」と子供の頃から身につけていたようだ。そうなりたいと思ってすぐに変われるものでもないが、自分に厳しすぎてつらい思いをしている人には多部の考え方も取り入れてもらいたいなと感じた。
本作では、日常の中で“小さな幸せ”を見つけていく2人の姿も映される。
多部自身、「小さい幸せを見つけるのは上手なタイプ」とのことで、「本当に小さいことですけど、お菓子が置いてあるところに好きなものがあってうれしいとか、控え室にあるお団子を持って帰って家で食べようとか、小さいことに『あ~うれしい』と思いながら日々生きています」と笑顔で語る。