4月4日・11日にNHK総合で放送される特集ドラマ『幸運なひと』(各日22:00~22:45)に出演する多部未華子にインタビュー。夫のがんをきっかけに関係を再構築する夫婦を描いた本作で、がんを患う主人公・松本拓哉(生田斗真)の妻・咲良を演じてどのような思いを抱いたのか。また、自身のことを「幸運な人」だと言い、自己肯定感はとても大事なことだと語る多部。幸せに生きるヒントになりそうな多部の考え方に迫った。

多部未華子

がんをテーマにしつつ、闘病記ではなく日常を描く本作。3月6日にNHK BSプレミアム・BS4Kで放送されたが、新たに編集を加え、前・後編にして地上波(総合)で放送される。

多部は「がんのお話というと、つらい、悲しいイメージでしたが、脚本を読んでとても前向きな夫婦のお話だなと感じました」と脚本を読んだときの印象を述べ、「事前にお話を伺ったり、撮影に参加する中で、がんになったからといって目の前にある生活は基本的には変えられないし変わらないということを強く感じました」と語る。

身内にがんになった人がいないという多部は、「がん患者の夫を持つ妻を、どのように演じたらリアリティがあるのか悩みました」と吐露。「1人の女性としてどういう風に生きていきたいか、がんを宣告された夫にどんな表情で接したらいいのか、毎日が課題だったなと思います」と撮影を振り返る。

撮影に入る前に、がんで夫を亡くした女性の話を聞き、それもすごく大事な時間になったという。

「同じくらいの年齢の方でしたが、旦那さんががんになって亡くなられて、今現在に至るまで、私とは全く違う景色を見て生きてこられた方なんだなと思い、そこに衝撃を受けたと同時に、とても明るい方で、力強さもあり、その裏には計り知れない苦労や悲しみ、葛藤があったのだろうなと、笑顔の中から感じ取れました。撮影前に貴重な機会をいただけたと思います」

特に女性の明るい表情が印象的だったと振り返る。

「今までに見たことがないくらいの素敵な笑顔で、その表情が本当に印象的でした。基本的にはずっと明るいままお話してくださって、それが不思議で。いろんなものを乗り越えて行き着いたのだろうなという笑顔を初めて体験しました」

そして、もし自身が咲良の立場だったら……と想像しても、答えが見つからないくらい難しい問題だと感じているという。

「働きたい、自分のチャンスを逃したくないという咲良の気持ちもわかるし、年齢的に子供がほしいという気持ちもわかります。何が一番自分にとって後悔しない選択なのかすごく悩むだろうなと共感しました。がんの方との向き合い方はこれでいいのか、など撮影中も毎日悩んでいましたが、今も想像できなさすぎて答えが出ないです」

難しい役どころに挑んだ本作だが、夫・拓哉役の生田とは映画『源氏物語 千年の謎』(2011)で共演経験があったこともあり、現場では楽しい時間を過ごせたという。

「2度目の共演だったので、初日から和気あいあいと。基本的には楽しく、本番が始まるまでは普通に話しながら過ごしていました。がんになる役だからといって暗い感じではなく淡々とされていて、私も作品の雰囲気に影響されることがあまりない人間なので、そういう意味では波長が合ったというか、楽しく撮影させていただきました」