読売テレビのトライアル枠『るてんのんてる』(毎週金曜24:30~ ※関西ローカル)で、3月10日・17日に放送された『リヴァーフィールド バラエティショー』(TVerなどで見逃し配信中)が、SNSで密かに話題だ。「ハリウッドのテレビ業界を知り尽くした男・リヴァーフィールドが、日本の三流芸人にテレビに必要なスキルを伝授する」という触れ込みだが、フタを開けてみると、予測不能ボケでおなじみの天竺鼠・川原克己がやりたい放題のカオス番組で、“三流芸人”として集められたアインシュタインの稲田直樹・河井ゆずる、相席スタートの山添寛を翻ろうしている。
「ここ数年で一番攻めてた」と出演者たちに言わしめたこの企画を担当したのは、読売テレビ入社4年目の小池洋平氏。川原がスタッフ陣と密にやり取りしていた制作の裏側や、『るてんのんてる』という枠のやりがいなども含め、話を聞いた――。
■オープニングで20分ボケ続ける
本編が始まって30秒で違和感が始まるこの番組。その原因は、MCのリヴァーフィールドが、誰かの吹き替えによって操られていることだ。ほどなくして、その声の主が川原(※川=river 原=field)であることに気づかされる。
入社してから「テレビ局で働くことに憧れるきっかけになった、10~20年前のふざけたバラエティを作りたい」という思いを抱いていた小池氏は「映画の『トップガン』や『フルメタル・ジャケット』のようなイメージで、“ハリウッドのテレビ業界を知り尽くした男が鬼教官となり、日本の三流芸人たちにテレビで生き残るために必要なスキルを教える”というパッケージに決めました」と、“外国人MCにリアルタイム吹き替え”というシステムを着想。
このシステムは、かつてフジテレビの深夜で放送されていた『ワールドダウンタウン』や、『笑っていいとも!」の「ミスターマッスル」でも採用していたが、吹き替えの声の主を前面に打ち出しているというのが、『リヴァーフィールド バラエティショー』の特色になっている。
吹き替え担当として川原に白羽の矢を立てたのは、「回しがうまいツッコミ芸人の方も一度は考えたのですが、前から仕事をしてみたいと思っていた最高のボケ芸人の川原さんだったら絶対に面白くなると思ったのと、このパッケージだったら、川原さんが好きにボケられる環境を作れて、魅力を存分に生かした企画ができる」という狙いから。
この環境を用意するため、スタジオ台本に記載したのは、進行に関わる決まりのワードのみ。その結果、「すさまじいボケ数で泣く泣くカットしたのですが、1本目はオープニングトークだけで20分近くリヴァーさんを使って、川原さんがボケ続けました(笑)」と、期待通りに暴れてくれた。
リヴァーフィールド役の外国人は、神戸生まれ神戸育ちでゴリゴリの関西弁をしゃべるモデルで、「すごく機転の利く方で、編集しててすごい思ったんですけど、川原さんのセリフに合わせて0.5秒ぐらいしかずれてないんです」と見事な対応力を発揮。日本語を完全に理解しているにもかかわらず、「周りのスタッフが全員笑っている中、リヴァーさんだけ笑わずにずっと真顔で進行する時間もあって、すごいなと思いました」と驚かされた。
■「加湿器付きマッチョ」「川合俊一栓抜き」とは
川原は、スタジオでの立ち回りだけでなく、仕掛けの部分にも積極的に参画し、スタッフと何度も打ち合わせを行っている。
1週目の「ワイプリアクションが大事!」は、川原へのインタビュー、川原とランジャタイ・国崎和也によるテレビショッピング、タージンによる食リポという3本のVTRを見せ続け、スタジオの3人にリアクションさせるという構成。当初は全て、実質MCである川原はVTRに出ない形で考えていたが、「あくまでリヴァーフィールド役に徹するフリもあるので、VTRに川原さんが出てるほうがカオスで面白いと思って」と方針転換し、3本中2本に登場。VTRのテーマとイメージを10本程度作り、その中から川原がこの3本を選んだ。
インタビューは川原が質問と回答を作成。しかし、インタビューアー役の小池氏に事前に送られてきたのは質問事項のみで、「収録当日は、川原さんの予想できない受け答えで、笑いを我慢するのに必死でした(笑)」と、こちらも翻ろうされた。
テレビショッピングは、完全に川原と国崎のアドリブで展開され、まさにカオス状態に。収録に向けて、川原から紹介したい商品のリストが送られてきたが、「『加湿器付きマッチョ』『川合俊一栓抜き』が、文字だけではどういう商品なのかを理解するのに少し時間がかかりました」と、スタッフも困惑。特大の「等身大・川合俊一マグネット」は大阪で製作し、収録場所の東京まで小池氏が手荷物で運ぶことになり、「タクシーに10回くらい乗車拒否されて、それが一番しんどかったです(笑)」と苦労を振り返る。
タージンの食リポは、発言のテロップが消えずに画面を埋めつくしたり、発言と違うテロップが出てきたりと、おなじみのテレビ演出を次々に破壊していく仕掛け。主なテロップ演出は小池氏が考えたが、発言と違うテロップのボケと、ワイプ出演者の言ってないコメントを勝手に吹き出しで入れるボケのテキストは川原が作った。
2週目は、「クイズで問題を予想する力」を鍛えるため、問題文の一部が隠されたクイズに解答する「クイズ問題を予想しろ!」編。こちらは、クイズ部分を制作側が作成し、川原にはそれ以外のトークで自由にボケ倒す場を提供した。