NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』の由良冬子役や、フジテレビ系ドラマ『忍者に結婚は難しい』の風富小夜役、「ビズリーチ」のCMで注目を集めた女優の吉谷彩子。そんな彼女が、動画配信サービス「Paravi」で配信中のオリジナルドラマ『悪魔はそこに居る』で、嫉妬や承認欲求が生まれる愛憎極まるサスペンスに挑んだ。子役時代から演じることをはじめた吉谷が「こういう役は初めて」と話した本作の現場でどんなことを感じたのだろうか――話を聞いた。

  • 吉谷彩子

小説投稿サイト「エブリスタ」で人気を集めコミカライズされた作品を実写ドラマ化した本作。子供のころから共に育ち、現在は一緒に生活しているいとこ同士の今西詩(吉谷)と九条美園(石井杏奈)が、表面上では仲睦まじく過ごしているが、その実は嫉妬と憎しみのなかドロドロとした感情をうごめかせる姿を描く。

「もう台本を読んで、かなりカロリーを消費するお話だろうなと感じていたのですが、実際めちゃくちゃ大変でした。詩はどちらかというと受け身だったので、しっかりお芝居をしないとつまらない作品になってしまうかなという部分では、とても難しかったです。でもやりがいはあるなと感じていたので、お話をいただいたときは、すぐに前向きな気持ちになりました」

吉谷が演じる詩は、居酒屋でアルバイトをしながらフリーライターを目指す真面目で努力家の女性。作品はハードな部分があるが、そこまで構えて現場に入ることはなかったという。

「台本を読んでいて、私自身が、自分の意見をあまり言えず思いを飲み込んでしまう部分など、結構詩と似ている部分が多いなと感じたので共感ができました。あとは先ほどもお話しましたが、基本的に詩は受けの芝居だったので、現場で美園と対峙して作っていった方がいいなと思って、あまり決め込まずに臨みました」

物語が進むにつれて、美園と詩の愛憎はよりこじれ、ドロドロとした感情がうごめく。ハードな場面も多々登場する。

「私自身、あまり引きずられないというか……この作品の空気のまま現場でいたら、かなりピリついてしまうじゃないですか。やっぱり“現場は楽しく”というのがいいと思っていたので、すごく和やかにいたいなと(笑)。もちろんお芝居する相手の方が、集中して気持ちを大切にしていたら、尊重して遠目で見ていますが、そうではなければ、基本的に楽しくいたいなと思っているんです(笑)」

■『舞いあがれ!』の反響に喜び 銭湯でも「由良先輩!」

吉谷と言えば、「ビズリーチ」のCMで見せるスーツ姿で背筋を伸ばした凛としたイメージや、現在放送中の連続テレビ小説『舞いあがれ!』で、福原遥演じるヒロイン・舞が大学在学中に所属した人力飛行サークルのパイロット・由良先輩のように活動的な印象の役柄を演じることが多かったが、本作では違った方向に熱量が向くキャラクターを演じ、新たな一面を見せた。

「いままで対立し合うような役をやったことがなかったので、皆さんに見ていただいたとき、どんな反響があるのかすごく緊張はしますが、しっかり楽しんでいただけるのではないかなという思いもあります」

視聴者からの反響という意味では『舞いあがれ!』への出演は非常に大きかったという。

「街を歩いていて声を掛けてもらえる率が増えました(笑)。結構『由良先輩』って役柄で呼んでいただけるんですよね。それだけ観ている方の印象に残ってくださっているんだなと感じることができて、すごくうれしいです。この間も銭湯に行ったとき、『由良先輩!』と声を掛けてもらったんです。そのとき全裸だったので、ちょっと恥ずかしかったのですが、ありがたいですね(笑)」