『桐島、部活やめるってよ』から10年以上の歳月が流れた。公開当時10代だった神木も、その後数々の映画やドラマで主演を務めるなど、俳優としての飛躍を遂げた。大きく変わったこともあったのではないだろうか――。

「正直、10年前とまったくもって変わっていないと思います。ある意味で変わっていないという自信があります(笑)。まあもちろん、撮影などのカメラ位置とかは、ちゃんと人に被らずに一発で自分の肩ごしの位置が分かるようになったりという“経験”はありますが、人間という部分ではまったく変わっていないと思います(笑)」

「変わらない」ことの尊さ。そこには神木自身の「基本的に楽しければいい」という考えを、ずっと変えたくないという強い思いと、中学時代にドラマで共演し、高校時代もクラスメイトとして共に過ごした親友からの言葉が大きく影響しているという。

「何年か前の話なのですが、(Hey! Say! JUMPの)山田涼介と(歌舞伎俳優の)中村隼人に久しぶりに会ったんです。しばらく話をしていたら、山田涼介が『お前は本当に変わらないな、ずっと』って言われて。『そんな変わんない? 大丈夫かな?』と言ったら『そこがお前のいいところだから』と言ってくれたんです。中村隼人も『俺たちが久々に会ったとき、お前が変わってないことで安心する』って。それを聞いて、自分はずっと変わらずにいることが使命でありテーマなのかなと思いました(笑)」

とは言いつつも、今年30歳という年齢を迎え、芸能生活は25年以上に及ぶ。神木に憧れる後輩たちも増えてきた。神木を見る周囲の目が変わってきたなか、 “変わらない”ということも簡単なことではないだろう。

「僕はあまり先輩、後輩とかキャリアみたいなものは関係ないなと思っています。あくまで一人の人として向き合うことが大切で。みんな違う人生を歩んできているわけで、それぞれ経験したことに優劣はないし。変なプライドを持ってしまうと、残念じゃないですか。絶対に素の自分でいるほうがいい。人を尊重し格好つけない。そうすれば、変なことにはならないと思います」

そんな神木の理想は、いくつになっても親しまれる人物。

「何歳になっても、いつまでも突っ込まれる存在でいたいです。『神木さんっていい人だけれど、ちょっとダサいよね』って言われるような人間になりたいです」

さらに本書のために高知県を旅することで、理想の人物像も見えてきたという。

「高知の人に触れられたのは、とても大きかった。僕は本のなかで高知のことを“奇跡の県”と表現しているのですが、本当に豪快で優しくて、温かくて、いつも楽しそうなんです。こうして言葉を並べても表現し足りないぐらい。“変わらない”ということは大前提でありつつ、高知の人のように、豪快で勢いがあり、楽しいことには全力で挑む――。そんな人間になりたいと強く実感しました」

「お前本当にバカだな、でも楽しいな」。神木にとっては最大級の誉め言葉だという。いよいよ突入する30代も、常にバカをしながら“楽しい”をモットーに突き進んでいくことを誓っていた。

■神木隆之介
1993年5月19日生まれ、埼玉県出身。1995年にCMデビュー、1999年に『グッドニュース』でドラマデビュー。映画『妖怪大戦争』(2005)で第29回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。その後、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012)、『バクマン。』(2015)、『君の名は。』(声の出演)、『3月のライオン』(2017)、『フォルトゥナの瞳』(2019)、『るろうに剣心』シリーズ、『ホリック xxxHOLiC』(2022)、ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(2019)、『コントが始まる』(2021)などに出演。4月3日スタートの連続テレビテレビ小説『らんまん』で主演を務めるほか、映画『大名倒産』が6月23日公開。

撮影:清永洋