記録をつけると何がいいの? Q&A
高尾先生が強く薦める「記録をつける」こと。Apple WatchとiPhoneの「ヘルスケア」アプリを使うといろいろな記録をつけることができますが、それは私たちの生活・健康にどう影響するのでしょうか。メディア向けに行われたQ&Aの内容をもとにご紹介します。
記録は自分自身を無防備にしないための「武器」
——月経を記録することのメリットは何ですか?
高尾先生 月経周期を記録すると、多くの人が自分の調子がいい時とイマイチな時があると気がつきます。自分の調子がいい時はいつだろう、という目で見ることもできます。もし調子の悪い時期に大事な用事を入れなくてはならない時は、自分なりに“気を付ける”ことができますよね。イライラしやすい、落ち込みやすい、その原因を自分で知っておくだけでも、無防備・丸腰でなく過ごせる方法になると思います。コンディションの把握がパフォーマンスに直結するということですね。
調子が悪いなら悪いなりに、自分がその期間にいると知る。その上で、なるべく悪い原因を減らしていきましょう。私たち専門家のところに来てくれれば、できることがあるし、記録はそのきっかけになります。
男性にも、一緒に対策してもらうためのデバイス
——女性の健康管理を、男性にも自分ごととして捉えてもらうには?
高尾先生 女性の困りごとが、男性にとって自分ごとになることはないと考えた上で、今何に困っているのか、それで何ができないのかを共有できるといいなと思います。実際に男性が生理を経験することはできませんからね。でも、お腹が痛い、ご飯が作れない、ならUberを頼もうとか、具体的に自分ができないこと・したいことを共有して、どうするかを一緒に考えることはできます。何かを使って辛さを100%伝え切ることはできませんが、その会話をするきっかけとしてこういうデバイスを通して相手に伝えるのはいい方法じゃないでしょうか。
学ぶ機会のなかった知識の共有にも
——Apple Watchは医療機器ではありませんが、不妊症に役立つ使い方はありますか?
高尾先生 先ほどの生理周期のグラフで「妊娠しやすい時期」という表現があったと思います。世の中ではよく排卵期が妊娠しやすいと思われていますが、実は排卵日の2日前がもっとも妊娠しやすくて、排卵日と排卵5日前は同じくらいなんですね。これは卵子の寿命が1日で、精子の寿命が2〜3日ということが理由です。だから、妊娠しやすい時期を把握して、その間に2日に1回、長くても3日に1回性交渉を持つことで、妊娠成立がけっこう望めるのです……ということを学ぶ機会って、実はないんですよね。
その意味では、妊娠しやすい時期のデータをパートナーと共有することにも意味があるし、iPhoneの「ヘルスケア」に書かれている記事をきっかけに会話をするだけでも意味があると思います。(記録は)女性が働くというソーシャルな面と、妊娠出産を含めたプライベートな面、両方を支えることができるから、賢く活用してもらえるといいと思います。