■メインキャスト4人の印象と芝居の魅力
――ここからはキャストについてお伺いします。拓郎を演じる眞島秀和さんの印象を教えてください。
近藤:拓郎がどんな人なのか掴みどころのない中で、眞島さんが喋ったら、それがもう拓郎だと信じて撮っていました。眞島さんは役に入って演じるというより、ナチュラルに拓郎になってくださって、それが本当に良かったです。役を自分に引き寄せられる、素敵な役者さんだなと。眞島さんとは「どこにでもいる普通の40代のおじさんを最後までやり抜こう」とお話ししていました。
――かっこよくなりすぎないように。
近藤:眞島さんが演じる以上、どうしてもかっこよくなりすぎてしまうときがあったのですが(笑)、それがまた絵里やくるみが惹かれる説得力になっていたと思います。
――続いて矢田亜希子さんの印象を教えてください。
松本:絵里は、会社ではキリッとした大人の女性という印象ですが、拓郎といる時は無邪気で感情表現豊かな一面が見えたりもする。その二面性を矢田さんはすごくいいバランスで演じられていて、矢田さんだからこそ、あんなにも魅力的な絵里が生まれたのだと感じています。
――中田青渚さん、木全翔也さんの印象も教えてください。
近藤:中田さんは現場にいるときはもうずっとくるみになりきっていました。毎回台詞っぽくなく、自然と話すお芝居に感動させられていましたね。木全くんはお芝居の経験があまりなかったのですが、中田さんが引っ張って、木全さんもついていこうと演じて、そんな2人の関係がすごく良かったです。
松本:中田さんはオーディションで選ばせていただいたのですが、場を引っ張っていく力があり、はつらつとしていて、初めて見たときから「くるみだ」と思わされました。
――中田さんは髪型や声を変えて、くるみの亡き母・安奈の若い頃も2人1役で演じられています。
近藤:本人は演じ分けをすごく心配していたのですが、制作陣の意見を自分なりに噛み砕いて、やりすぎないのにちゃんと別人だと分かるお芝居になっていて、頭のいい方だなという印象を受けました。別の人が演じるという案もあったのですが、そこは勝負しようということで中田さんに頑張っていただいて良かったです。
松本:クランクインは安奈がピアノを弾いているシーンからだったのですが、時間のない中ちゃんと練習してきてくださって、努力の方だなという印象も受けました。
■20代・30代の監督が“テレビドラマ”に感じること
――続いて、お2人から見た「テレビドラマ」についてお伺いしたいのですが、お2人の人生の中で、何歳の頃でもいいので「これが流行っていたな」「このドラマ世代だな」という思い出を教えてください。
松本:私は『女王の教室』が好きでした。当時小学生だったので特に感情移入しまくりで……。阿久津真矢(天海祐希)のような真の愛を持った先生に憧れていました。
近藤:僕は『ウォーターボーイズ』をすごく見ていました。あの頃って、学校では皆で『ウォーターボーイズ』と『ごくせん』の話ができたんですよね。そこがやっぱりテレビドラマのロマンだったと思うのですが、今はなかなか「皆見ているよね」という会話が難しいじゃないですか。もう、あの時代は来ないんでしょうか(笑)。それでも地元に帰ると皆「ドラマ見たよ」と言ってくれたりするので、まだまだ圧倒的に見られているものだとは感じます。
松本:今は逆に配信が充実していて、見逃してしまったときや話についていけないと感じたときも見返すことができるので、新しいサービスを味方につけてさらに広がっていけるといいですよね。
――映画製作でこの世界に入ったお2人ですが、映画とドラマの撮影の違いはありますか。
近藤:根本的に同じ映像作品だと思って作っていますが、映画は10年後や未来を見据えて製作するのに対して、ドラマは今この瞬間どんな人が見ているんだろうと考えながら撮影するので、その違いは面白いですね。
松本:2時間の映画と、1時間×10本の連ドラだと単純に尺が全然違うので、仮に同じ題材だとしても描き方のアプローチが全然変わってくるのは面白いところだと思っています。
■『しょも恋』最終回までの怒涛の展開
――では最後に、きょう9日には第8話が放送されますが、最終回までの見どころを教えてください。
松本:この先、拓郎と絵里の違いが明確に見えてくるのですが、どちらが良い、悪いではなく、2人のそれぞれの“選択”から何かを感じていただけたらうれしいです。
近藤:まだまだ怒涛の展開が待ち受けています。第8話は拓郎が20年以上向き合ってきた仕事に対する思いや友情を描きながら、仕事のことで頭がいっぱいになってしまって恋愛がこじれてしまうというストーリー。そして第9話は、「結局拓郎とくるみってどういう関係だったの?」というところにスポットを当て、答えを出します。拓郎がいろいろなものに決着をつけていく姿から、『しょうもない僕らの恋愛論』というタイトルが何を指していたのか感じてほしいです。
1993年生まれ、大阪府出身。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業。在学時に制作した共同監督作品『小村は何故、真顔で涙を流したのか?』が第17回京都国際学生映画祭長編部門にてグランプリ、長編映画作品『食べられる男』ではドイツニッポンコネクション審査員特別賞、短編映画『ウーマンウーマン』が第12回田辺・弁慶映画祭、下北沢映画祭にて観客賞を受賞。近年の作品にドラマ『直ちゃんは小学三年生』『直ちゃんは小学五年生』(テレビ東京)、『トーキョー製麺所』(MBS/TBS)、『婚活探偵』(BSテレ東)など。
1998年生まれ、大阪府出身。慶應義塾大学総合政策学部卒業。高校生時代に手掛けた初長編監督作品映画『真夏の夢』が史上最年少の16歳でゆうばり国際ファンタスティック映画祭に正式出品。翌年、同映画祭にて映画『脱脱脱脱17』が審査員特別賞・観客賞を受賞。第29回東京国際映画祭フェスティバルナビゲーターに就任。2018年4月にTBS『情熱大陸』に出演する。近年の作品に映画『明け方の若者たち』、ドラマ『ホリミヤ』(MBS/TBS)、『シェアするラ! インスタントラーメンアレンジ部はじめました。』(BS-TBS)、『超特急、地球を救え。』(テレビ東京)など。