俳優の眞島秀和が主演を務める読売テレビ・日本テレビ系ドラマ『しょうもない僕らの恋愛論』(毎週木曜23:59~)。きょう9日放送の第8話は、くるみ(中田青渚)が美大にチャレンジすることを知り、刺激を受ける拓郎(眞島)だったが、勤務先であるデザイン事務所の社長から経営を手伝ってほしいと依頼される展開に。
そんな40代の恋愛や人生模様を描いた今作の監督を務めているのが、30歳の近藤啓介監督と、25歳の松本花奈監督。2人はどんな視点で1960年生まれの漫画家・原秀則氏のコミックを映像化したのか。経験していない年代の物語だからこそ描けたこと、監督としてのこだわりやキャストの印象、そしていまのテレビドラマへの思いを聞いた。
■主人公・拓郎は掴みどころのない人物
――まずは原秀則さんの原作漫画を読んだときの印象を教えてください。
近藤:普段、恋愛漫画を読まないこともあってか、どんどん突拍子のないことが起こっていくどこか掴みどころのないストーリーが新鮮でした。
松本:登場人物それぞれの価値観や生き様が、恋愛模様を通して見えてくるのが面白かったです。映像化するに当たっては、恋愛だけではなく友情や仕事の話も盛り込みたいと思っていたので、原作からさらに話を膨らませていく作業が楽しかったです。
――ほかにも映像化にあたり楽しいと思ったポイントはありますか。
近藤:はじめに主人公の拓郎について「どんな奴なんだろう」と、徹底的に皆で話し合ったことですね。「拓郎と仕事」についてのイメージを膨らませていくうち、少しずつキャラクターが見えてきて。
――一言でいうと、拓郎はどんな人物だという話になりましたか。
松本:それが、最後まで掴みどころがない人でした(笑)。撮り終えた今も、どんな人だったのか……。
近藤:優柔不断で、すべて後手後手に回ってしまうという性格も、だんだんかわいく見えてくるんだろうなと思いながら撮影していましたが、どんどん拓郎のダメさが目についてきて。恋愛も含めて、最後まで「ほんとにダメな奴だな!」と(笑)。でもそれが人間っぽくていいのかもしれません。人間なんてこんなものだよな、と。
■生きてきた年月と同じ「20年以上の片思い」が想像できず
――その煮え切らないダメなところがリアルであり、「しょうもない」というタイトルともいい意味で結びついているように感じます。続いて、監督としてこだわったポイントを教えてください。
近藤:僕は拓郎が歯を磨いているシーンとか、普通のドラマでは省略するような部分をひたすら撮ったことですね。物語にあまり関係ないように見えるシーンを積み重ねることで作品が完成していくことを目指していました。
――日常シーンの積み重ねが、それぞれの人物像を明確にしていく手助けをしていたのではないでしょうか。松本監督はどうですか。
松本:私は絵里(矢田亜希子)にフォーカスした第5・6話を担当したのですが、「20年以上拓郎のことが好き」という絵里の気持ちが最初はなかなか想像できなくて。
――今25歳の松本監督の人生丸々という年月ですよね(笑)。
松本:そうなんです(笑)。でもそこにちゃんとリアリティを持たせたくて、20年以上片思いしていたけどその間誰とも付き合っていなかったわけじゃないとか、絵里の背景をしっかりかためてから撮影しようと。
――絵里は拓郎と結ばれた後も、これまでの人生でお互いが確立してきたものを尊重して関係を築いていこうとします。正に40代の大人の恋愛ならではの描写だと感じたのですが、40代の恋愛を描く面白さや難しさはどんなところにありましたか。
松本:深く考えすぎるとどんどん分からなくなってしまいそうだったので、40代だからこうだろうということではなく、あくまでフラットに、シンプルに、絵里の「好き」という気持ちを大事に描きました。一方で、脚本の今西祐子さんが「40代あるある」や、「40代だから分かる小ネタ」を入れてくださっていたので、そこは残したいなと。第5話で絵里が「映画って本当にいいものですね」と水野晴郎風に、悠(木全翔也)に言うシーンなど。
■経験してない年代の物語だからこそ想像が膨らむ
――高校生の悠に伝わっていないところも含めて、素敵な小ネタでした! 近藤監督は「40代の恋愛」をどのように描きましたか。
近藤:僕は恋愛というよりは「40代男性」の拓郎の仕事の話をメインに、想像できる範囲で作り上げていきました。恋愛に関しては本当にお手上げで、撮っているだけで恥ずかしくなるんです(笑)。カメラマンの谷口和寛さんが上手に撮ってくださって本当に助けられました。
――ラブストーリーは苦手なんですか。
近藤:お話をいただいたときから「恋愛ドラマはできないですよ」と(笑)。逆に僕に任せていただいたからには、恋愛以外の部分を膨らませた人間ドラマに仕上げたいなと思いましたし、僕もそこに意味とやりがいを感じていました。
――自分よりも年上の「40代男性」を描いたことについてはいかがですか。
近藤:自分が今同世代だったら、「さすがにこの描写は子どもすぎるかな」とか、「40代はもっとこうだよな」という意識が働いてしまうと思うのですが、イメージで作るからこそ「40代になっても、きっとこういう部分は変わらないだろう」という思いで描ききれたと思います。
――近藤監督はラブストーリーが苦手だということですが、松本監督が担当された第5・6話では、拓郎と絵里だけじゃなくくるみと悠のキスシーンもあり、一気に恋模様が動きましたね。
近藤:『しょうもない僕らの恋愛論』というタイトルですが、僕は「しょうもない」だけやっていて、「恋愛論」を松本さんがやっています(笑)。
松本:(笑)。