もう1人、ABEMAの番組でブレイクを果たした人物といえば、豊富な知識とサッカー愛、さらには予想の的中率で世間を驚かせた影山優佳だ。塚本氏は「テレビ朝日と一緒にやらせてもらった『FIFAワールドカップ64』という番組で事前に約半年ご出演いただいて、我々は元々すごいことを十二分に存じ上げていたのですが、それが世の中に一気に広まったのを非常に感じました」と舌を巻く。
今回の起用は、「日本代表や各国のことを気軽に知ってもらいたいということで、アイドルという立場で様々な発信をしていただけると思ったので、できる限りの試合で出演していただきたいというお話を事務所の方々としました」といい、20試合以上に登板。「予想を的中させるというところも含めて、見どころをたくさん作っていただき、本当にありがたく思っています」と感謝した。
本田氏にしても、寺川アナにしても、影山にしても、サッカーの監督で言えば、起用の采配がことごとく決まる形となったが、塚本氏は「試合の内容や結果、ご出演いただいた皆さんの素晴らしさと、いろいろなことが噛み合って、我々はありがたくその恩恵を受けたというだけなので、改めて皆さんの素晴らしさに感謝したいと思います」と謙虚に述べた。
■最大のリスクを避けるための「入場制限」
予想以上の反響という点で触れなければいけないのが、日本の決勝トーナメント第1戦・クロアチア戦の前に告知した「入場制限」だ。グループリーグを突破し、ワールドカップへの関心が急上昇していた中で、「我々は全64試合全てを届けて楽しんでいただくのが目的だったので、視聴中の方が見られなくなるというのを最大のリスクとして考えていました」(塚本氏)という。
そこで、決勝トーナメント進出を決めたスペイン戦の結果を受け、それまでの3試合のアクセス状況など様々なデータを検証し、入場制限の可能性を事前告知することを、藤田社長が判断。結果として、「前半のうちにはもうその“臨界点”に達して、その後も調整しつつ、最後まで走りきったという形です」と、最悪の事態は免れた。
ワールドカップの後に行われたボクシング・井上尚弥の王座統一戦、NBA・八村塁のレイカーズ移籍デビューといった試合において、別の配信サービスでアクセス集中による影響が出たことは、ABEMAのシステム面の信頼の高さを、改めて示す出来事になった。長畑氏は「今回ABEMAと仕事をして、いろんな技術者が汗を流して中継をつなげようとしているんだと感じて、自分の会社に帰って、テレビの技術者にも改めて感謝だなと思いました」と再確認したそうだ。
■予想以上のオンデマンド視聴数「見過ごせない結果」
ABEMAの試合別視聴者数ランキングでは、この「日本×クロアチア」がトップだったが、地上波テレビの中継番組の視聴率は、日曜日のゴールデンタイムにテレビ朝日が放送した「日本×コスタリカ」が1位だった(世帯42.9%、個人30.6% ※ビデオリサーチ調べ・関東地区)。この違いの要因は、ABEMAのオンデマンド視聴の使用率の高さだ。
塚本氏は「ワールドカップを楽しんでいただいた56%の方がライブで見られたのですが、残りの44%がオンデマンドで視聴される人でした。これは我々が狙ったところでありながら予想以上の数字だったんですけど、深夜帯や全試合を追うというのもなかなか難しいので、ハイライト映像や見逃しフルマッチ配信を見ていただいた方が多かったようです」と明かし、長畑氏は「ABEMAでは、後から見ている人がこれだけいるんだというのは、見過ごせない結果でした」と注目している。