ASUSTeKからは「ROG Strix Scar 18 (2023)」がリリースされた。Intelが第13世代Core、NVIDIAがGeForce RTX 40シリーズ、それぞれノートPC向け製品を発表し、これを搭載した形だ。「ROG」モデルということで、搭載するのはCore i9-13980HX、GeForce RTX 4090 Laptop GPU。ともに最上位グレードだ。それでは最新世代、最上位のモンスターゲーミングノートPCの詳細を紹介したい。
ASUSTeKの「ROG」ブランドは、マザーボードもしかりビデオカードもしかり、そのほかのデバイスにしても機能を満載、少しでも上を目指したスペックに加え、ゲーミング向けのデザインを特徴としている。ゲーミングノートPCである本製品も同様だ。本製品はとくに最高のゲーミングノートPCを望むユーザー向けで、ROGの中でも最大級の18インチ筐体。大迫力でゲームを楽しむことができる。
まずはデザインのポイントを紹介しよう。形状としてはフラット面を多用した大人しい造形だが、RGB LEDイルミネーションにはかなり力を入れている。天板部にLED搭載ROGロゴ、キーボードにもRGB LEDバックライト、そしてパームレスト手前から側面にかけてと背面排気口上部にRGB LEDバーを搭載している。すべてが発光するとかなり鮮やかだ。
カラーリングはブラックだが、キーボードとヒンジ部の間のスペース、キーボード面周囲の側面にスモークグレーを用い、内部の様子を透過して見ることができる。そして底面。デスクトップ代替ノートPCの底面と言えば設置以降目にする機会も少なく、多少の造形はあっても機能が優先されるものだ。ところが本製品ではブラック一色ではなくグレーに塗り分けられた部分があり、そこにはROGロゴもある、底面にここまでこだわった製品というのもなかなかない。
240Hz、G-SYNC対応の大型画面や2.5GbE LANなどゲームに特化
サイズは39.9×29.4×2.31~3.08cm。専有面積はディスプレイサイズなりに大きいが、およそ17.3型に準じているようだ。本製品のディスプレイは解像度が2,560×1,600ドットで、アスペクト比が16:10となる。一般的な16:9アスペクトの17.3型ディスプレイが2,560×1,440ドットなので、本製品の幅はほぼ17.3型相当、縦方向にドットが増えた分で18型にインチ数が増えているようだ。たしかに奥行きは17.3型ノートPCと比べると拡大しており約30cm。(一般的な机であれば問題ないと思われるが)幅はともかく奥行きについては17.3型よりも少し大きく専有することを念頭に置いたほうがよいだろう。なお、重量は3.1kg。ずっしりと重いことは確かだが、それこそ10年前の17.3型ノートPCが4kgオーバーもざらだったことを思い出せばたいしたことはない。
ディスプレイのサイズと解像度は前述のとおり。名称は「ROG Nebula Display」とされている。駆動方式はIPS-Level(IPSに準ずる)。視野角も広く、発色に関してはDCI-P3:100%とされているほどよい。Pantoneの認証も得ているというので、配信などで色味のチェックをする際にも重宝するだろう。Dolby Vision HDRもサポートしている。
また、ゲーミングスペックという点では、G-SYNC&240Hz対応。レスポンスタイムは3ms。G-SYNCに対応しているので、テアリングのないなめらかな映像が得られるほか、60fpsを割り込んでも画面のカクつきを感じにくくなっている。そして240Hz対応なので、eスポーツタイトル向きでもある。本体スペックがそもそも高いので、どのジャンルのタイトルにも対応できる製品と言えるだろう。
キーボードは10キー付きで日本語配列。一般的なキーボードと若干異なるのがESC(エスケープ)の右隣に空間を置き、右Altも省略されてその右端、上下左右キーとの間に空間が設けられている。F1~F12キーも4キーごとに空きを設けて判別しやすくしている。少し幅が詰まっているのが右Shiftとその右の「\」(バックスラッシュ)。さらに一部の特殊機能を割り当てたキーはファンクションキーの上に独立させている。こうした変わったレイアウトではあるが、(右Shift、右Altの使用率が少ない筆者の場合)日本語テキスト入力はそこまで違和感がなかった。
タッチパッドはおよそ8.5×13cmほど。十分な大きさでこまかなカーソル操作もしやすい。ただし上下にまだスペースがあることから、18型専用設計というわけではないように思われる。
側面インターフェースは、多くを左側面に集中させつつ、右側面は使用頻度の高いUSB 3.2 Gen2 Type-A×2のみ。このクラスではめずらしく背面にインターフェースをおかない。おそらく背面排気を最大化した設計と思われる。そして左側面にはACアダプタ用ジャック、HDMI 2.1×1、Thunderbolt 4(DP Alt-mode with G-SYNC対応)、USB 3.2 Gen2 Type-C(DP Alt-mode with G-SYNC/USB PD対応)、HDMI 2.1×1、オーディオ入出力コンボジャック×1を配置している。映像出力はHDMI、Thunderbolt 4、USB 3.2 Gen2 Type-Cの3系統だが、後ろ2つはデータ転送にも用いられるのでやや端子の総数としては少ない印象もある。
ACアダプタの出力は330W。出力のわりにはサイズは小さいので、変換効率のよい部品を使用していそうではある。
最新&最上位を求めるユーザー向けの全盛り内部構成
CPUとGPUのモデル名については冒頭でも紹介しているが、詳細を見ていこう。
まずCPUのCore i9-13980HX。デスクトップ版の第13世代Core i9と同様に8基の高性能コア(Pコア)と16基の高効率コア(Eコア)を搭載し、24コア32スレッドの処理が可能だ。また、末尾にHXがあるとおり、ノートPC向けの中でもTDPが高めの設定で、ベースが55W、MTPが157Wといった設定になっている。しかもPコアのターボ時最大クロックは5.6GHz。Thermal Velocity BoostやTurbo Boost Max Technologyをサポートしている。
メモリはDDR5に対応している。CPUのスペックとしてはDDR5-5600までサポートするが、本製品ではDDR5-4800で、容量は16GB×2枚の32GB。SODIMM×2スロットの設計とされ、32GB×2枚の最大64GBまでサポートされる。
Core i9-13980HXの統合GPUについても紹介しておこう。統合GPUはIntel UHD Graphicsとされ、本製品でもおもに低グラフィックス負荷&バッテリー駆動時を中心に利用可能だ。実行ユニットは32基。最大クロックは1.65GHzとされる。ディスクリートGPUとの切り換えは
続いてディスクリートGPU。GeForce RTX 4090 Laptop GPUは、今回NVIDIAから発表されたノートPC向けGeForce RTX 40シリーズの最上位GPUである。しかも前世代のノートPC向けGeForce RTX 30シリーズでは90の型番がなかった。満を持して登場したGPUといえる。コードネームはAda Lovelaceでデスクトップ版と同じ。そして第4世代Tensorコアや第3世代RTコア等を搭載し、機能ではDLSS3がノートPCでも利用可能になる。
スペックを見ていくと、CUDAコア数9728基、ブーストクロックは1455~2040MHz、消費電力(GPU Subsystem Power)は80~150W(本製品ではDynamic Boost時175Wという表記もある)、メモリは256bit接続で16GB。アーキテクチャが進化したことに加え、前世代の最上位GPUであるGeForce RTX 3080 Ti LaptopのCUDAコア7424基から大幅に増加している。ブーストクロックが2GHz台に引き上げられていることもあり、パフォーマンスは大きく向上していると思われる。
配信という点ではAV1ハードウェアエンコーダーも可能できる。GeForce RTX 4090および4080についてはデュアルエンコーダー仕様とのこと。Discordを用いて4K/60fpsでの配信を行えると言われている。
さて、CPUとGPUの電力配分について紹介しておこう。ASUSTeKの説明によれば、Turboモード時でCPUが55W、GPUが175W、マニュアルモード時だとCPUが65W、GPUが175Wで合計240Wとのことだ。ただし、CPU側の55W、65Wという電力はTDPのことを指しているものと思われる。別途、マニュアルモード時のPL2では最大175W(CPU本来は157Wのはずだが……)というCPUのスペックどおりの表記も見られる。いずれにせよACアダプタの供給電力が330Wなのでこの制限を受けるが、これを使い切る勢いであることは間違いない。
電力設定はほかのASUSTeK製品と同様、「Armoury Crate」から行なう。ターボ、マニュアル(手動)のほかにも、サイレント、パフォーマンスといったモードが用意されていた。デフォルトはパフォーマンスだ。
また、本製品はストレージも強化している。さすがにPCI Express Gen5世代とまではいかなかったが、Gen4 x4接続のNVMe SSDを2基、RAID0(ストライピング)構成とすることで転送速度をかせいでいる。容量は1TB×2基で計2TB。海外モデルでは2TB×2基の構成もあるようだが、CPUとGPUでここまでコストがかかっていると1TB×2基のほうが現実的だろうか。
これだけのスペックを詰め込むと冷却面も相当に強化されている。最後にクーラーを紹介しよう。本製品の冷却機構では3基のファン、7本のヒートパイプが用いられ、接触面には液体金属が用いられていると言う。銅製ヒートシンクのレイアウトも改められ、表面積は2022年モデルのStrix SCAR 17と比べても82.5%増加しているとのこと。ちなみに、アイドル時は本当に静かで驚いた。