「クルマのあるくらし」を若年層に提案、プライベート空間を創出
いわゆる“Z世代”、つまり若年層向けのコンセプト展示では車室空間に限らず、この世代に向けた新しいビジネスの機会やニーズをとらえるため、パナソニックが行っているコンセプトの探索活動について紹介していました。いわば、「クルマのあるくらしはどんなものか」、「クルマの中を自分好みにするには?」といった、体験価値そのものの提案に主眼を置いたかたちです。
パナソニックが目指す、若年層向けの“自分らしく過ごせる車室空間”の展示はコンセプトカーというよりは、車室を想定したスペースになっていました。前席と後席をパーティションで区切ってテーブル&デスクを置き、後席をリラックスしたり作業に集中したりするための“プライベート空間”化することや、クルマを止めた状態で手元のスマホアプリから車内の空調・照明・音響を一括管理し、シーンに応じた設定を保存して切り替えるといった“お気に入りの環境を持ち運ぶ”コンセプトを実体化。後部座席の窓ガラスも透明な状態からすりガラス状に変化させ、プライベート空間を創出できるしつらえになっていました。
他にも、駐車場とクルマをセットでワンストップ提供する「レンタライフサービス」や、クルマに詳しくない人向けに、多彩なユーザーレビューとおすすめプランから“自分にとってクルマのあるくらし”をシミュレーションできるデジタルツールの提供、といった提案もありました。
「どんな(クルマの)使い方をしているか、どんな暮らしを実践しているか? 金額であったり、クルマのかっこよさであったり、そういったものではなく、リアルなユーザーの使い道。ディーラーに行ってもカタログにも載っていない情報を、彼ら(Z世代)は非常に求めています」と担当者は話していました。たとえば、コロナ禍以前からブームになっているキャンプに興味を持ったものの、キャンピングカーを入手するかというと“ガチすぎる”ので引いてしまう……といった若者に、「普通の車以上キャンピングカー未満みたいな使い方がある」という事実を知らせると、初めてクルマに興味を持ってもらえる、そういった現状があるといいます。
前出のファミリー向け、シニア向けと比べると、若年層向けの車室空間の提案はまだ研究段階にあって具体的な実装にまでは辿り着いていませんが、実際に社内にいるZ世代の若手社員の意見を採り入れ、パナソニックグループ内だけでなく他社とも連携しながら、次の新規事業のアイデアにつなげていく……ということを考えているようです。
PASのビジネスは自主的な提案型へ。「これからのユーザー価値を一緒に模索」
パナソニック オートモーティブシステムズ 車室空間ソリューション室室長の大田馨子氏は、今回報道陣向けに開催されたセミナーの中で、PASの車室空間ソリューション室の役割について、次のようにコメントしています。
「私自身、パナソニックでコンシューマー向けの製品の企画を担当してきました。その経験を活かし、(PAS以外の)他のカンパニーから異動してきた新しいメンバーとともに、カーOEMに求められる“これからのユーザー価値”を一緒に模索しながら活動しています」(大田氏)。
そして大田氏は、「クルマに乗り、使っていくエンドユーザーの気持ちに寄りそうことを大切にしており、そのためにユーザーの声を聞くことに時間をかけています。(ユーザーからの)生の声を私たちがどんなカタチに変えていけるか、それをクリエイティブな創出活動につなげています」とも話りました。
大田氏によると、車載事業においては「これまでもパナソニックグループの強みを活かした双方向の提案については各カテゴリーごとに行っていたものの、今回のコンセプトカーのようなかたちでのシステム提案や、実機の車に仕立てたコンセプト提案はできていませんでした」と、報道陣からの質問に答えるかたちで明らかにしています。
「個々の事業部やビジネスユニットが将来のロードマップを描くなかで、『もう少しこういう風に進化させていきたい』というものを、カーメーカーと新たな商品を検討するのが(これまでの)メインの活動でした。それをPAS側からの提案型に変えていきたいと考えています。当然、カーメーカーもいろんなことを考えているので既に気づいていることもあると思いますが、だとしても構わない。私たちが持つ商材の強みや技術をベースにして、こちらからも提案していく、しかもそれはエンドユーザーの声をきちんと聞いた上でニーズが見込めることを前提に、自主的な提案活動をしていくという試みになります」(大田氏)。