ASUSTeKの「TUF」と言えば耐久性をウリにするゲーミングブランド。2022年末、2023年頭にかけ、最新GPUを搭載したTUFブランド・ビデオカードの新製品が登場したので、今回はそれらの特徴を見ていこう。

  • ASUSの高耐久「TUF」、GeForce RTX 4070&Radeon RX 7900 XTの新型モデルを試してみた

    「TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Edition」と「TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GB」、2枚の「タフ」を試す

今ASUSが推す「TUF」。耐久性がウリだがコスパのよさも

ビデオカードは高価なパーツだ。為替の影響、半導体不足の影響もあるが、それ以外にもここ数世代のGPUの性能が飛躍的に向上したこともある。性能で言うならば、もはやメインストリームがWQHD、ハイエンドで4K、エンスージアストなら8Kが見えてきている。そして価格が上昇した要因として挙げるなら、この性能を実現するために消費電力も増加し、電源回路や冷却機構(GPUクーラー)のコストも上昇していることが挙げられる。

ASUSTeKではROG、TUFといったブランドを展開している。とくに最上位のROGには憧れをいだいていたユーザーも多かっただろう。ただ、ここまでビデオカード価格が上昇すると、高付加価値のROGモデルはとても高価な製品になってしまっている。PCのコストバランスの見直しを迫られる中、ビデオカードもコスパのよいTUFモデルの魅力が増している。そしてASUSTeKもTUFブランドを育てること、そしてその製品開発に注力している。

TUF最新のRTX 4070 Tiモデル & RX 7900 XTモデル

今回はTUFの最新モデル2製品を用意した。一つはNVIDIA GeForce RTX 4070 Tiを搭載する「TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Edition」(TUF-RTX4070TI-O12G-GAMING)。

  • 「TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Edition」

この製品は1月にNVIDIAから発表されたGeForce RTX 4070 Tiを搭載するTUFモデルだ。GeForce RTX 4000シリーズとしては上から4090、4080、そして4070 Tiといった順。TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Editionは実売価格155,000円前後。もちろん高価ではあるが、ASUSTeKのGeForce RTX 4000シリーズビデオカード製品では本OCモデルと同じTUFの非OCモデルがもっとも安い。そしてGeForce RTX 4090ビデオカードと比べれば半分の価格だ。

GeForce RTX 4070 Tiリファレンスのブーストクロックは2,610MHz。これに対しASUS TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Editionは、製品定格のブーストクロックが2,730MHz、OCモード時はこれが2,760MHzに設定されている。

  • ビデオカードホルダーとPCI Express 8ピン補助電源×2系統→12VHPWR変換アダプタが付属する

もう一つはAMD Radeon RX 7900 XTを搭載する「TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GB」(TUF-RX7900XTX-O24G-GAMING)。

  • 「TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GB」

こちらは昨年12月にAMDが発表したRadeon RX 7900 XTを搭載するTUFモデル。Radeon RX 7000シリーズは、まだ7900が発表されたのみで、上位にXTX、下位に本製品も搭載するXTがラインナップされている。ASUSTeKからは、Radeon RX 7900 XTX、XTそれぞれのGPUを搭載するモデルがリリースされており、本製品は7900 XTを搭載、そしてOCモデルという位置づけだ。TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBの実売価格は178,000円前後。発売間もない製品なので先行発売した非OCモデルとの価格差があるものの、Radeon RX 7900シリーズにコストパフォーマンスを期待する方に注目のモデルだ。

Radeon RX 7900 XTリファレンスのブーストクロックは2,400MHz(ゲームクロックは2,000MHz)。これに対しASUS TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBでは、デフォルトモードが2,500MHz(2,130MHz)、OCモードが2,535MHz(2,175MHz)に設定されている。

  • ビデオカードホルダーが付属

  • ドライバーにもなる

AXIAL-TECHファンと高グレードコンデンサ

製品写真のとおり、ハイエンドグレードの両モデルはともにトリプルファン仕様となっている。ただしサイズ感はまったく異なるので先に紹介しておこう。TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Editionは305×138×65mmで3.25スロット占有。TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBは352.9×158.2×72.6mmで3.63スロット占有だ。

  • TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Editionは3.25スロット占有

  • TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBは3.63スロット占有かつ高さにも注意

30cm超、35cm超という大型ビデオカードなので、とくにケースとの相性を要確認だが、高さ方向もしっかり確認したほうがよい。とくにTUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBは高さ約16cm。16cmなら一般的な空冷CPUクーラーがこのくらいなので大丈夫そうに見えるが、ビデオカードではPCI Express補助電源コネクタ分の高さも考慮する必要がある。また、TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Editionはこれより低いものの、12VHPWRコネクタを採用しており、こちらはムリな折り曲げが接触不良、そして場合によってはショートする危険があるとされている。12VHPWRだけでなく、PCI Express補助電源ケーブルもムリに曲げるのは危険。幅に余裕のあるケースを用いるのが理想だ。

  • TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Editionは12VHPWRを採用

  • TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBはPCI Express 8ピン補助電源端子×3

厚みについてはどちらも実質的なスロット占有は4スロットなので、ビデオカード以外の拡張カードを利用する方はマザーボードのスロットレイアウトを確認したい。その拡張カードが発熱量の多いものとなると、4スロット目からさらに1スロット分空間を設けたほうがよい場合もある。

さて、この目立つトリプルファンにもTUFの特徴の一つが採用されている。PCパーツは適切に冷えた状態で運用するのがよいのはご存知だろう。耐久性をうたうなら冷却にも力を入れなければならない。

今回の2つのTUFモデルは、いずれもAXIAL-TECHファンを採用している。ブレードが十分なエアフローを生み出すよう軸部分を小さく、そこで生み出されたエアフローの拡散をふせぐため、ブレード外周に設けられたリムが設けられている。一般的なブレードと軸のファンに対し、AXIAL-TECHファンのエアフローは21%向上していると言う。同時にファンの耐久性という点では軸のベアリングにも注目だ。ベアリングは流体軸受やライフルベアリングなどいくつかタイプがあるが、TUFで採用されているのは2ボールベアリング。2ボールベアリングは回転が安定、軸ブレが少なく耐久性に優れる。耐久性という点でTUFにマッチしたベアリングだ。

  • 独特の形状をしたAXIAL-TECHファン

  • TUF Gaming GeForce RTX 4070 Ti 12GB GDDR6X OC Editionは約93mm径

  • TUF Gaming Radeon RX 7900 XT OC Edition 20GBは約107mm径

なお、これで終わりではない。3つのファンは反時計回り、時計回り、反時計回りという具合に、中央一つの回転方向を変えている。これもエアフローの拡散を防ぐ効果があるとのことだ。そしてこのトリプルファンは準ファンレス機能「0dB Fan」も備えている。GPU温度が50℃を下回れば回転停止、55℃を超えたら回転開始する。この準ファンレス機能は専用ユーティリティのGPU Tweak IIIからON/OFFできる。準ファンレスONなら静音仕様に、OFFにすれば常に冷却され安心感もぐっと高まる。

  • 3基のファンは互いに異なる回転方向の設定。エアフローの拡散を防ぎ効率的に冷却

  • 両モデルとも基板は小さめで、後部側にはファンの風が抜けるスリットを設けている

ファンの下にあるヒートシンクも大きい。これはクーラーの厚みからもあきらかだが、ヒートシンクの大きさ=放熱面積でもある。さらに複数本のヒートパイプがGPUの熱をヒートシンクへと伝える。

  • 中に見える太いヒートパイプがGPUの熱を端々に輸送。大型、高密度のヒートシンクが放熱を行なう

もう一つ、基板上の部品もスタンダードなビデオカードとTUFでは異なるところだ。PCのパーツの故障、その故障する部品と言うとまずコンデンサが挙げられるだろう。TUFでは「ミリタリーグレード」のコンデンサの採用をうたっている。

コンデンサは種類も容量もさまざまだが、そのほかにグレードというものも存在する。まず、一般的なコンデンサの寿命が短いわけではない。一般的な家電機器を安心して利用できるのはこのためだ。使われる場所というのも大きな要因だが、一般的な室温下を想定している。半導体寿命を縮めるような高温下で使われることは想定されていない。

一方で、高温下や放射線の多い場所、故障が人命につながるような用途ではグレードも一つ上のものが用いられる。自動車用や航空宇宙用などがあるが、TUFで採用されているのはミリタリー、つまり軍事用(に準ずるもの)だ。

ASUSTeKがTUFで用いるミリタリーグレードのコンデンサ、その詳しい仕様は明らかにされていないが、いくつか製品でアピールしているところはまず耐熱105℃品であること。コンデンサの耐熱スペックは、ATX電源でよく耳にする。たとえば実際にAC-DC変換を行なう部分は発熱が大きいため、廉価な電源では85℃品を使うところ、高級な電源では105℃品を使う。ビデオカード上は高温になり、高温下での使用は半導体寿命を縮める要因になる。だから、通常よりも高耐久のものがよい、といった理屈である。

そしてもう一つ、耐久性が20K、20,000時間であることも明かされている。コンデンサの寿命は5K、12Kなどさまざま。20Kは最高クラスの寿命である。仮に24時間稼働させた場合、ざっくり2年と103日強だ。もちろん、24時間365日ぶっ通しでゲームをするようなことはないから、一般的な使用では3、4年まず壊れないということになる。ただ、当然だがマイニングのような高負荷が長時間続く使い方をすれば急激に寿命を削ることになるし、PCケース内において適切に冷却されていることが前提だ。

  • コンデンサの表面にある「MIL」刻印。ミリタリースペックを示すものだ