2本目の『run away 大逃亡』は、「“30分間ポリスから逃げきれたら100万円!”という全く新しい逃亡ゲームに野田クリスタル、平子祐希、後藤拓実、水谷隼、井上咲楽が挑戦! 果たしてゲームの行方は?」と予告されていた。
こちらの問題は、やはり年末年始特番の収録が多い時期のため、同じロケ場所で他局の別番組の撮影が入ってしまったということ。説明を受けた出場者たちが一様に驚く中、原田Dは「でもそんなに気にしなければ、何とかなるとは思うんで」と、常套句で押し切った。
CMが明け、別番組のロケが入っているという振りが効いた「無人のテーマパークに集められた5人の逃亡者」という大ウソのナレーションから、いよいよゲームがスタートするが、開始わずか1分少々で別番組と思われるキャラクターが画面に映り込んでしまう。しかも、フィールドサバイバルゲームというジャンルまでかぶっているようだ。これは先が思いやられる。
その後、別番組のキャラクターやプレイヤーに遭遇しそうになると、タレントの本能で避けようとする逃亡者たち。もはや“ポリス”より大きな敵と戦わなければならない構図ができ上がってしまった。
しかし、当然全てを回避することはできず、完全に鉢合わせてしまったり、別番組の仕掛けを引いてしまったり、逆に別番組がこちらの仕掛けに触ってしまったりと、両番組が侵食し合う事態が続出。それに乗じて、別番組のミッションに図らずも協力する形になったり、ポリスを撒く棚ぼた展開も発生したりと、カオス度が増していく。
こうして『run away 大逃亡』が進行していくうちに、ベールに包まれた別番組の断片が徐々に見えてくる。コンセプトやミッション、詳細なルールはどうなっているのか、タレントたちの役割はどう分かれているのか……遭遇するたびにヒントが与えられるが、核心が明かされそうになるとCMや別場面に飛んでしまうので、気づいたらこちらでも“考察”的な楽しみ方をしている自分がいた。
もっとも、『ここにタイトルを入力』の制作陣がその正解を用意しているとは限らないが、原田Dは自身のTwitterで『ドクロバスター』という番組名をロゴ写真で公開している。
本番前の打ち合わせで、井上咲楽が「最近こういう番組多くないですか?」と言うとおり、昨年の大みそかにゴールデンタイムで『逃走中』(フジテレビ)と『THE鬼タイジ』(TBS)という同ジャンルの番組が直接対決となったことで話題になったが、そこへの皮肉とも便乗とも捉えられるこの企画。いずれにせよ、“全く新しい逃亡ゲーム”という看板に偽りなしであることは間違いない。
■これは“成立”した番組なのか
毎回別企画を展開する『ここにタイトルを入力』は、昨年4月から6回シリーズで、小峠が縦分割して同時出演した『クイズ・ファイブセンス』『Rest Garden』、街ブラロケを防犯カメラなどの映像でつなぎ合わせた『フワちゃんの浅草のんびりツアー』、1つのテーブルマジックを延々遠回りして見せた『KING OF ILLUSION』、予算不足を次々に反映したドラマ『足りない世界で愛を描く。』、奇怪なルールの恋愛バラエティに放り込まれる『その恋、買い取ってもいいですか?』、姿の見えない出演者たちで進行していく『真夜中のおしゃべり倶楽部』を放送。
“凡ミスを犯したスタッフが無謀な手段で挽回しようとする”、“トラブルを過剰に恐れるスタッフが斜め上の解決策で乗り切ろうとする”といった切り口により、原田Dいわく「テレビのテンプレートを崩して再構築」し、これまでの常識をぶち壊す番組を放ってきた。
元日にNHKで放送された『あたらしいテレビ2023』で、テレビ朝日の小山テリハ氏、テレビ東京の大森時生氏などとともに、若手制作者らの座談会に参加した原田D。この中で、番組の実現にいくつもの理屈が必要となり、“成立”という言葉が今のテレビ局で頻繁に飛び交っているという話題でみな共感していたが、今回の『ここにタイトルを入力』は果たして“成立”させた上で放たれた番組なのか。はたまた、これまでの実績で信頼を築き、制作者の思いで突っ走った番組になっているのか。ぜひ、目撃して確かめてほしい。