1月8日にスタートする大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合 毎週日曜20:00~ほか)で今川義元役を演じる狂言師の野村萬斎にインタビュー。義元としての役作りや主演の松本潤らとの共演の感想、29年ぶりの大河ドラマ出演の感想などを聞いた。

  • 『どうする家康』で今川義元を演じる野村萬斎

大河ドラマ第62作となる本作は、江戸幕府を開いた徳川家康の生涯を新たな視点で描く物語。主人公・徳川家康を松本潤が演じ、脚本を古沢良太氏が手がける。

萬斎が演じる今川義元は、公家文化にも精通する教養人、政治家で、仁徳による民のための王道政治を掲げる理想主義者。人質として預かった聡明な家康(松本)に幅広い教養を身につけさせ、家康が父のように心から尊敬する人物だ。

萬斎は「諸説あるようですが」と前置きした上で、本作で古沢氏が描く義元について「家康は義元にとって人質ですが、一緒の生活圏にいて、国家というものをどう考えるのか、のちに家康が幕府を開く際に影響を与えた人物と捉えて演じました。彼に身をもって何かを授ける役だと思っています」と解釈。

「キーワードは『王道と説く』」だと言い、「戦乱の世であり、戦いは避けられないけれども、その後の理想的な国づくりを説く。それが王道を説くということで、覇道と王道の違いを語るシーンも出てきます。カリスマでありながら人格者という面で、厳格な人物として演じることを心がけました」と語った。

そんな義元と自身は、境遇や思いにおいて重なる点が多く、共感を持って演じられたという。

「伝統を保持しながらも未来のためにどうしたらいいのか、理念を持って治める政治に長けていた人物だと思います。私もいろんなことをやっているように見えるかもしれませんが、ある種の理想や確信を持って、古きを守りながら、伝統や歴史にこそ発想の種があると思って、そこから学んで理想の形を作ろうとしているので、重なるものは大変多いと思います」

そして、自身も義元から刺激も受けたようで、「義元が説く王道と覇道は、物語の全編にわたって元康(のちの家康)に大きな影響を与えるという意味では素晴らしい理念だなと思いますし、徳川幕府を開く礎になるのはすごいことだなと、誇りを持てる役だと思って演じました」と語った。

また、役作りとして「ある種の父親代わりという大きさを見せることを心がけました」とも語る。

「大きな目で元康と息子の氏真(溝端淳平)を見ている。氏真に対しては、ある種非情な部分もありつつ、国を治めるという責任を考えるとそういう判断もあるかなと。何を大事にするかという取捨選択において、今と違って個人の尊厳以上に国を大事にする。そのときに、ただ単に自分の腕力で治めるのではなく、信念を持って理想的な国をつくっていくという、武力とは違うカリスマ性を見せないといけないと思いました」