俳優の高橋一生が主演を務めるNHKのドラマ『岸辺露伴は動かない』第3期(第7話・第8話)が、12月26日・27日(総合 22:00~22:54)に放送される。スタート前から、溢れる“岸辺露伴愛”を述べていた高橋が迎える3年目の岸辺露伴。改めてどんな思いで臨んだのだろうか――胸の内を聞いた。
第1話「富豪村」、第2話「くしゃがら」、第3話「D.N.A」、第4話「ザ・ラン」、第5話「背中の正面」、第6話「六壁坂」というさまざまな怪異と向き合ってきた岸辺露伴と担当編集の泉京香。今シーズンで新たに題材として取り上げられたのが第7話「ホットサマー・マーサ」、第8話「ジャンケン小僧」だ。
「ホットサマー・マーサ」は、コロナ禍の現代を彷彿とさせる物語。長らくリアルな取材ができず鬱々としていた露伴が、バキンという名の犬と共に散歩に出た際、迷い込んでしまった神社の巨木にあった祠に入ってしまったことで起こる、奇妙な出来事を描く。「ジャンケン小僧」は、露伴の漫画「ピンクダークの少年」を持ったファンの少年・大柳賢(柊木陽太)が、執拗なまでに露伴にジャンケンを挑んでいくうちに……という話。
「第1期、2期と、だいぶ毛色の違うエピソードで、ご一緒するゲストの方々も非常に面白い方が多く、とても充実した時間だったのですが、今期はこれまで以上に未知の感覚が大きかったです。基本、編集の泉くん(飯豊まりえ)以外は、動物と子役の方との対峙することがほとんどでした。またこれまでとは違うベクトルで……まさか犬に向けてお芝居をし続けるとは思っていませんでした」
さらに話を重ねるごとに岸辺露伴という人物の奥行きに面白さを感じるようになっていったという。
「僕の中で露伴のイメージというのは、杜王町で東方仗助たちと一緒にいた頃のものなんです。どちらかと言えば偏屈で奇人、けれど一本筋の通ったところを持つ人物。そのイメージを持ちながら、これまで演じてきました。ただ、荒木飛呂彦先生が近年お書きになった話では、露伴のキャラクター性がどんどん膨らんでいる印象がありました。今回の作品でも露伴が涙目のような表情になったり、バキンという犬を飼ったりすることも僕のイメージにはなかった。その意味で今回の作品は、僕の中の露伴像を崩してくれるエピソードだなと思いました。露伴を1人の人間にしていく上では、とてもいい作業ができたと思っています」
■露伴のブレない志と、怪異に対する対応の変化
今回の作品に入る際、演出を担当する渡辺一貴氏と話をする時間があったという。
「第1期の頃のお芝居に戻してみようという話をしました。厳密に言うと第1期とも違うのですが、露伴が能動的に動くというよりも、相手の芝居を受けるというスタンスを取りました」
「ジャンケン小僧」のエピソードは、高橋自身が「体験したい」と以前話していた物語だった。
「原作を映像化するに当たって、そのまま描くわけにはいかない部分はどうしても出てくるのは仕方ないのですが、お芝居として心掛けているのは、あくまで岸辺露伴という人間が住んでいる杜王町で突発的に起きる初見のものを怪異として捉えていくという風に変換する作業でした。その中で、露伴は子供だから大目に見るとか、子供だからしょうがないという考え方は一切しない。人はなかなかそういう態度を取れないものですが、僕自身、そういったお芝居の仕方はしていると思います」
3年にわたって演じた露伴。8作品を重ねてきたが、露伴の変化した部分、変わらない部分をどう捉えているのだろうか。
「変わらないのは多分、志の部分だと思います。自分のなかで何を優先するのかというのは、露伴のなかではブレていないような気がします。そこは意識してお芝居してきたことなので。変わったところで言えば、怪異に対する対応の仕方でしょうか。『もしかしたらこれは怪異なのかもしれない』という思考の結びつき方に、早くシフトできるようになって、より柔軟になってきたような気がします」