この国の約9割はローマカトリック教徒です。ほかにロシア正教会、プロテスタントなどが主流です。
ポーランド人は伝統的なクリスマスを迎えるために、12月25日の4週間前から準備を始めます。教会のミサに頻繁に通うようになり、家の掃除、クリスマスツリーの準備などをして、キリスト生誕日に向けて心身を徐々に清めていきます。
「断食」の習慣もあります。クリスマスイブ12月24日までは肉類は食さずに、池で釣った魚、キノコ類、果物、木の実、野菜類を食べます。12月25日以降は、お肉が解禁となり、シカ肉、牛肉、豚肉など食べることができるそうです。
クリスマス料理
ピェロギ(水餃子)入りボルチシ、キノコスープ、キャベツとキノコのピェロギ、鯉のフライ、鯉のオーブン焼き、鯉のソテー、ニシン、魚類のパテ、ケシの実のお菓子(クティア)、チーズケーキ(セルニク)、ケシの実ケーキ(マコビィェツ)。後述のコンポートを入れて12種類あり、全部食べると翌年は良いことがある、といわれているそうです。
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ドライフルーツのコンポートは、プラム、リンゴ、ナシを燻製にした後、付け込んだ後、いただく。
クリスマスツリー
ポーランドでは第二次世界大戦後、欧米風クリスマスツリーが飾られるようになりましたが、それ以前は、ポドワジニチカと呼ばれる神様の木を天井から吊り下げていたそう。または白いウエハース(オプワテク)を丸く輪のように切って、紐でつるしていました。パヨンクというカラフルな布飾りもあって農村で使われていたそうです。
高級レストランなどに行くと、シャンデリアに赤松などを添えているところもあり、かつてのツリーの影響なのかもしれないとが感じることがあります。
オプワテクの交換
24日にミサへ行ったとき、友人などとオプワテクを割って互いに渡し合って、来年が良い年になるよう祈ります。
- 12月24日……深夜12時にミサへ行き、聖歌を歌います。飲酒は禁止。
- 12月25日……ピアノのある場所で聖歌を歌い(ある家族の一例)、プレゼントを交換。
ポーランド人は基本的に、クリスマスは家族全員で集まり共に過ごします。地元の人の話で興味深かったのが、誰かが突然訪ねてきた時のために、必ず一人分、余分に料理を用意しておくこと。キリスト生誕を祝い、テーブルの下に藁を敷くことがあるそうで、おもてなしの気持ちを大切にする伝統的な習慣が根付いていることを感じさせられました。
二度目のポーランド旅で感じたことのまとめ
今回のポーランドは、2019年7月以来2度目の訪問でした。ウクライナ侵攻のための節電のせいか、以前より少し灯りが減っているような気もしましたが、それは当然と言えば当然。そしてこの街に来て、ポーランド人が語る隣国の同胞ウクライナ人への思いに、切実なものを感じました。
ワルシャワ初日の夕食時に、現地観光局の方から「ワルシャワ蜂起博物館を見なければ本当のポーランドは理解できません」と言われ、翌日にさっそく博物館を訪問。そこで第二次世界大戦中に10万人以上のポーランド人、つまり人口の約3分の1がナチスやソ連に虐殺された事実を初めて知りました。アウシュビッツのユダヤ人殺害だけではなかったのです。そして最終日に訪れた「パルミリ・メモリアルミュージアム」。ここでは、第二次世界大戦中の1939年から1941年、広大な森の21か所で約1,700人の知識人が虐殺されて埋められたことも知らされました。
ヨーロッパから遠く離れた日本で平和に暮らす筆者。現在も戦いが続くウクライナの隣国ポーランドで、知らなかった史実と戦争という魔物の残虐さを学べたことは大変実のあるものだったと感じています。
ポーランド国民は20世紀のみならず、長い歴史の中で私たちには計り知れない苦難に満ちた歴史を歩んできました。にも関わらず、たくましく母国のために立ち向かう勇気を持ち、明るく、人をもてなす心を忘れないポーランドの人たち。まだほんの少し、2度の旅でポーランドの歴史の触りをかじっただけですが、縁あって何度か足を運ばせていただいた同国のことを、少しずつ、実際に旅しながらもっと深く学んでいけたらと思えた旅でした。
取材協力: ポーランド政府観光局