サッカーワールドカップ・カタール大会の日本代表に選出された冨安健洋選手。Jリーグ・アビスパ福岡でプロデビューし、ベルギー・シント=トロイデンVV、セリエA・ボローニャFCを経て、現在は英プレミアリーグ・アーセナルで活躍しているが、日本テレビ系列の福岡放送(FBS)が、テレビ局として海外移籍後初の現地取材に成功した。この模様が、特番『夢スポSP「Proof/証明」 サッカー冨安健洋 ~福岡からW杯へ イギリス独占取材~』(19日16:00~ ※福岡ローカル)で放送される。

FBSの独占取材に応じたのは、今回の取材を担当する宮地裕一ディレクターが中学時代から冨安選手に着目し、長年にわたって信頼関係を築いてきたためだ。地域密着の地元局だからこそ実現した取材の裏側を、宮地ディレクターと、共に担当する佐々野俊太郎ディレクターに聞いた――。

  • 冨安健洋選手 (C)FBS

    冨安健洋選手 (C)FBS

■スポーツ情報番組で異例の特集

宮地Dと冨安選手との出会いは、当時アビスパ福岡アカデミーのコーチ陣から、「こいつは将来大物になる」と紹介してもらったこと。中学3年生だったそのときの印象を、「たっぱがありましたけど、さすがにまだ細身だなという感じでした」(宮地D)と振り返るが、すでにトップチームの練習に合流して井原正巳監督(当時)の評価も高く、高校2年生でJリーグに出場できる「2種登録」されると、高校3年生時にはアビスパでは史上初となる高校生で「プロ契約」を結んだ。

そんな逸材に出会えた宮地Dは取材を進め、スポーツ情報番組『夢空間スポーツ』(毎週日曜16:55~ ※福岡ローカル)で3回にわたり特集。最初に放送したのは高校時代で、そのキャリアのスポーツ選手の特集を組むのは、異例のことだったという。

2016年には高校3年生でアビスパのトップチームに昇格し、18年にはベルギー1部のシント=トロイデンVVへ。海外移籍後も引き続き追いかけて取材したいところだったが、20年からコロナ禍に突入してしまい、今回ようやく現地取材が実現することになった。

■取材は不得意と明言も「お久しぶりです!」

今年のワールドカップでも注目の選手だけに、これまでも取材依頼は多くあったそうだが、現地での取材許可が下りたのは、今回のFBSが初。本人が取材に応えるのが苦手という性格もあるが、FBSが入り込めたのは、中学時代から長年にわたり宮地Dが築いてきた信頼関係が大きい。

宮地Dは「代表戦のときとかでも、顔を合わせたら向こうから声をかけてもらったりして、ありがたいですね」とその関係性を語り、後輩の佐々野Dは「ロンドンで宮地さんと冨安選手を待っていたのですが、来た瞬間に冨安選手から『お久しぶりです!』と声をかけられていて、いちディレクターとしてすごくうらやましい気持ちがありましたし、こういう関係性を僕も未来ある選手と築けたらという思いになりました」と話す。

冨安選手はアビスパ福岡時代から「取材を受けるのは正直、得意ではないです」と話していたそうだが、宮地Dから見ると、「質問すれば確実に答えてくれますし、頭のいい選手なので、こちらが取材したい意図をすぐ理解して、それを言葉にできる選手だと思います。自分が話すことで、何かモチベーションを上げるということをする選手ですね」と分析した。

  • 冨安選手(左)と握手を交わす宮地裕一ディレクター (C)FBS

■「福岡が好き」も重要な要素

長年、冨安選手を見つめてきた中で変わらないのは、謙虚なところだそう。「人に対する感謝というところで、今回のインタビューの冒頭で、福岡ではおなじみの“ウエストのうどん”をお土産に渡したら、もうすごく喜んでくれて(笑)。カメラマンさんや、僕らの運転手と写真も撮ってくれて、本当にフランクな人間性が出るので、取材を受けるのを得意としない選手なんですが、一度取材したらまた話を聞きたくなる人なんです」(宮地D)と、魅力を感じている。

地元・福岡への愛も強く、「すごく故郷を大事にする選手です。DAZNで内田篤人さんと対談されていたとき、引退したら福岡に戻ってユースのコーチになりたいという話もしていましたが、今暮らしているロンドンも福岡と雰囲気がすごく似ているそうなんです」(宮地D)とのこと。

宮地Dは、FBSの取材を受けてくれるのは自身との関係性に加えて、「福岡が好きだということが大きいと思います(笑)」といい、ワールドカップに向けて、「福岡の人たちの思いを背負って戦いたいとも言ってくれています」と明かした。