早稲田大学(早大)、hide kasuga 1896、三井化学の3者は10月27日、超高分子量ポリエチレン「UHMW-PE」製の軽量・低摩擦なギアを開発し、従来の金属ギアに替えて同ギアをロボットの指部に搭載するだけで、従来に比べて約3%のエネルギー消費低減、ならびに約89%の軽量化を達成することができたと発表した。

同成果は、早大 理工学術院 総合研究所の大谷拓也次席研究員、早大 理工学術院の高西淳夫教授、hide kasuga 1896、三井化学の共同研究チームによるもの。詳細は、IEEEが関心を寄せるすべての分野を扱う学際的なオープンアクセスジャーナル「IEEE Access」に掲載された。また、12月16日にhide kasuga 1896が保有する東京・表参道の「gallery de kasuga」にて、研究成果の展示イベントが行われる予定だという。

ロボットの消費エネルギーを低減するには軽量化が重要とされている。そのため、フレームを金属製から高強度プラスチックや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)への代替えが進められているほか、最近では、ロボットの関節を駆動するギアも金属製からプラスチック製に代替えが進んでいる。

さらなる消費エネルギー低減のためには、軽量化に加え、駆動部の摩擦を減らすことも重要なことから、今回、研究チームは、UHMW-PEに着目することにしたという。

UHMW-PEは、軽量、高強度、摺動性(しょうどうせい:滑りやすさ)、耐薬品性に加え、通常のポリエチレンやほかのエンジニアリングプラスチックよりも優れた摺動特性、耐摩耗性、衝撃強度を有する。これらの特性から、高負荷や高速回転のロボットの歯車に適しており、これまで利用されてきたエンジニアリングプラスチックよりも消費エネルギーの低減が期待できるという。

今回の研究では、UHMW-PE製ギアをロボットに搭載することで、駆動時の消費エネルギーを実際に低減することが目指された。UHMW-PEの中でも最先端素材であり、低摩擦などの特徴を持つ三井化学製の「HI-ZEX MILLION」(0.93g/cm3)と「LUBMER」(0.97g/cm3)のギアがそれぞれ作成された。

ちなみにUHMW-PEは溶融粘度が高く、射出成形や押出成形が困難なため、圧縮成形や切断成形が一般的だという。HI-ZEX MILLIONは代表的な粉末状のUHMW-PEであり、優れた摺動特性や耐摩耗性を有する。今回は、ブロック材の切削加工によってギアが製作された。

一方のLUBMERは射出成形や押出成形が可能な特殊なUHMW-PEであり、UHMW-PEの中でも優れた摺動特性や耐摩耗性を有しているとする。従来の金属ギア(CAC502製,8.8g/cm3)と比較すると、LUBMERギアは約89%ほど軽量だという。また、一般的なUHMW-PEに比べて加工が容易であることに加え、溶融混練によりリサイクルが可能なため、循環型経済の観点からも整合性のある材料といえる。