• 性別適合手術に臨む石野さん (C)NTV

手術を受け、戸籍を変更し、名実ともに男性となった石野さん。手術直後には、カメラを持つ難波Dに乳房を切除した胸を何の躊躇もなく披露した。「とにかくその姿を人前で見せたいという思いが強かったんです。“これが男だ!”という象徴的な行動だったと思います」と振り返り、番組が進むにつれて筋肉の付き方も急激に変化していく。

こうした外見に加え、内面も大きく変化。「男性になって希望が一気にあふれ出た感じがして、“すべて何でもやろう!”という勢いがありますね」と、従来持っていた明るさが一層増したそうだ。

番組後半は、初めてのスーツ、初めての男性更衣室、初めてのストリップ、初めての男呑み、初めての就職面接…と、見ている側もすっかり女性だったことを忘れ、1人の男性が新たな道を歩むドキュメンタリーに。「30歳になって第二の思春期を味わうみずみずしさに注目して見てほしいです。僕らも忘れかけていた初々しさや、男社会に入っていくところの素直さを見せるというのが、今回の番組で一番やりたかったことなので」と狙いを明かす。

  • 筋トレをする石野結さん

  • 社会人になって悪戦苦闘

  • (C)NTV

■木村花さん母からのメッセージ「絶対自信を持って」

手術後、一緒に焼き肉を楽しむ木村響子さんが、石野さんに「大半はいい人でも、心ない人が数%いるだけで、辛辣に(心を)えぐられたりすることもあるから、その傷つけられたときの防御方法も考えながら、自分に絶対自信を持ってほしい」と声をかける場面がある。娘・花さんとリンクした重みのある言葉は、非常に説得力のあるアドバイスだ。

その姿を見ていた難波Dは「ご自身が一番体感されているからこそ、石野さんに対しても同じような思いを味わってほしくないと。いろんな意見があるかもしれないけど、負けないでほしいというメッセージを感じました」と受け止めた。

今回の番組は、カミングアウトや手術などに一歩踏み出せず、悩んでいる人たちを後押ししたいという思いも込めて制作。「常に意識したのは、前向きな石野さんの姿をお見せすることで、石野さんが自分と同じトランスジェンダーの方たちに訴えかけたい思いです。“決断するなら若いうちにしたほうがいい”という話もしていて、そういう石野さんを通して、コンプレックスを抱えている人たちに力を与えるような番組になればと思って作りました」と強調する。

男性になってより明るく、自信を持った石野さんの姿からは、トランスジェンダーや性的マイノリティーの人に限らず、前に進もうという勇気がもらえるはずだ。

「石野さんは本当に前向きで、落ち込まないんです。僕が『つらいインタビューになるだろうな…』と思ったときも、絶対に笑って終わり、次につなげようという人柄なんですよね。本当に素晴らしい人だなと思いました」といい、今後も「まだまだやりたいことがあるようなので、取材できる機会があれば追っていきたいと思っています」と意欲を示した。

  • 難波裕介ディレクター(左)と石野さん (C)NTV