■松本若菜も喜んだ差し入れ
――今作では松本若菜さん演じる佐知子との大人の恋も描かれます。先日松本さんに取材した際に蔵之介さんのことを「差し入れの王様」と仰っていたのですが、どんな差し入れをされたんでしょうか。
もう、僕が京都で仕事をする意義はそこしかないと思っているので(笑)。実家が京都で商売をさせていただいている関係でいろんなお店を知っていますし、素敵なものをたくさん味わってもらいたくて、考え抜いた差し入れをさせていただきました。
――松本さんは、中でも生麩のおまんじゅうが忘れられないほど美味しかったと仰っていました。
生麩のまんじゅうって皆あまり食べないんですかね。京都駅でも買えるんですよ。僕もいつも新幹線に乗るときに買って帰ります。ほかにも洋菓子店のアイスや、老舗和菓子屋の大福を差し入れしました。
――やはり東京より京都のほうが勝手知ったるお店が多いですか。
特に今回は松本さんが泊まっていたところが僕の実家の最寄り駅だったので、親子丼や南インド料理、フルーツサンドにアップルパイ、たくさんオススメのお店をお伝えしました。松本さんもメモされていましたね。
――南インド料理まで! 本当に幅広くカバーされているんですね。そんな松本さんとのお芝居はいかがでしたか。
皆さんもご存知の“松本劇場”で話題になった松本さんとまたお芝居ができて有り難かったです。
――“松本劇場”でのご活躍は蔵之介さんも目にされていましたか。
はい。お綺麗なのはもう周知ですが、やはり“実力”を兼ね備えてこその“劇場”ですよね。佐知子は柔らかくてしなやかだけど芯が強くてなんでもへっちゃらという女性。穴の開いた靴下を履いていたりノーメイクだったりという素顔も、松本さんが気持ち良く演じてくれました。ご一緒できてすごく楽しかったです。
■増田英彦とのシーンは「一番稽古した」
――そして今回は、サラリーマン時代の元同期・ますだおかだの増田英彦さんも出演されます。増田さんが「台本にはない『笑い』を入れたがる蔵之介氏に相談され、リハーサルをする毎に2人のやりとりがドンドン長くなっていった」とコメントされていたのですが、共演シーンについて教えてください。
せっかく増田さんが出てくれるので、僕も色々とやりたいなと思って「ここ、こう変えたくて」と現場で話したら、増田さんは「台詞完全に入れてきたのに」と(笑)。でも「これはどうかな」と聞くと「じゃあこれは?」とまた提案してくれて、楽しくアイデアを出し合いながらどのシーンよりも一番稽古しました。元同僚の増田さんと掛け合いをできることがすごくうれしくて。2人の呼吸が心地よかったです。
――印象に残っている増田さんとのエピソードはありますか。
実は、このインタビューを受けているスタジオが正に思い出の場所なんです。お互い会社を辞めてこの業界に入って、初めて再会したのがこのスタジオの楽屋。僕はドラマの撮影で来ていたのですが、さんまさんの番組で来ていた増田さんが僕の名前を見つけて楽屋まで会いに来てくれました。今まで会社で一緒に仕事をしていた同僚と、スタジオで会うというのは感慨深いものがありました。あとは、『ますだおかだのオールナイトニッポン』に呼んでくれたのも思い出に残っています。しかも番組が始まってまだ2回目の放送に、僕の作品の宣伝にとゲスト出演させてくれて。『オールナイトニッポン』って、オープニングでテーマソングをBGMにスポンサーの名前を読み上げていくじゃないですか。それを自分の同僚が目の前でやっているのを見て、「本当にオールナイトニッポンのパーソナリティやってるんだ、すげぇかっこいい」と涙がこみ上げました。ものすごく感動的でしたね。『M-1グランプリ』で優勝したのもうれしかったなぁ。
――ずっと活躍を応援されていたんですね。お2人のシーンが楽しみです。それでは最後に、今作の見どころを教えてください。
連ドラを見て頂いた方からの声で一番うれしくて、今回もそう感じてほしいと思うのは、このドラマを見て「あぁ、京都っていいな、京都に行きたいな」と言ってもらえること。きっとそう思える作品になっているので、これを見て夏の京都を思い出して、これからは秋という素敵なシーズンも待っていますので、ぜひ京都へお越しください。
――今回のインタビューで蔵之介さんの京都愛が伝わってきましたが……京都に帰りたいという気持ちは湧き上がらないのでしょうか?
それは……ずいぶん前から湧き上がっています(笑)。いつかまた京都に住めたらいいなとは思いますね。
1968年2月4日生まれ。京都府出身。神戸大学在学中から劇団「惑星ピスタチオ」で活動し、NHK連続テレビ小説『オードリー』(00年)で注目を浴びる。映画『超高速!参勤交代』(14年)で第38回日本アカデミー賞優秀主演男優賞、映画『空母いぶき』(20年)で第43回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。近年の出演作にNHK大河ドラマ『麒麟がくる』、ドラマ『和田家の男たち』、映画『科捜研の女 -劇場版-』など。2022年は、ドラマ『ミステリと言う勿れ』、映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』、『峠 最後のサムライ』、配信ドラマ『モアザンワーズ / More Than Words』(9月16日~)のほか、舞台『冬のライオン』にも出演。公開待機作に映画『嘘八百 なにわ夢の陣』(2023年1月公開予定)、『シャイロックの子供たち』(2023年2月17日公開予定)、舞台『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』(2022年11月23日より東京芸術劇場にて)がある。
■スーツ、シャツ、ネクタイ/CROWDED CLOSET(MEN'S BIGI)※その他スタイリスト私物