スペシャルドラマとして1年半ぶりに復活するフジテレビ系ドラマ『監察医 朝顔2022スペシャル』(26日21:00~)。主演の上野樹里が演じる朝顔は、東日本大震災で母を失ったという役柄で、大きなテーマとして震災をめぐる人々を描いてきた同シリーズではたびたび被災地でもロケを行い、地元の人たちに寄り添ってきた。
兵庫出身で阪神大震災の経験があり、被災地の人たちのことを他人(ひと)事と思わず、個人的にも交流を続けてきた上野。震災が起きた当時、役者であることの“無力感”があったと涙ながらに打ち明けるが、今では「演じること」で伝えられるものがあるという思いで、役に臨んでいる――。
■3年ぶり開催の陸前高田「七夕まつり」で撮影
『監察医 朝顔』は、シーズン2が終了してから1年半という月日が経ったが、“その時間を埋める”という感覚はなく、「台本の中の朝顔も、私たちと同じように現在進行形で生きていると思うので、今の自分で今できる朝顔をやればいいという感じなんです」と、役への向き合い方を語る上野。万木家や解剖室などのセットに入り、そこにキャストやスタッフがそろうと、自然と朝顔に戻っていく感覚になるそうだ。
今回のスペシャルでは、3年ぶりに開催された陸前高田の「七夕まつり」での撮影が実現し、物語・作品にとっても意義深いシーンとなっている。
祭りを間近で体感し、「山車の大きさや、何十人物男性が一生懸命掛け声を出して太鼓を叩いているところを見て、すごく感動しました。浴衣を着て参加できたので、撮影なんですけど普通に楽しかったです(笑)」と興奮しながら振り返り、「伝統的なお祭りを伝えられるので、『私も行ってみたいな』と訪れてくれる人が増えるといいなと思います」と、放送の反響に期待を寄せる。
■被災地の“今”を伝えるドキュメンタリーに
陸前高田は、第1シーズンで朝顔と父・平(時任三郎)が三陸鉄道に乗って街を訪れるシーンでクランクインし、第2シーズンでは朝顔と平が母・里子(石田ひかり)の実家のある海辺の街を訪れるシーンでクランクアップを迎えており、『監察医 朝顔』にとって縁の深い土地の1つだ。
ドラマの映像を通して現地の姿を見せることによって、「陸前高田の“今”を伝えられるという意味では、ドラマというよりドキュメンタリーとも言えるのではと思います。震災から10年経って、みんな考える機会が減ってきていると思うんですけど、あのときの記憶を今も抱えて生きている人がいるし、まだまだ支援の力は必要だと思うので、“今”を伝えられるというのは、すごくやりがいがあります」と使命を感じている。
初めて陸前高田に訪れたのは、震災翌年の2012年。震災を後世へ伝えるために津波が到達した場所に桜を植える活動に参加し、紅しだれ桜の苗を植えた。また、津波によって農作物が育たなくなってしまった土地を再生させようと活動するグループとも交流しているという上野は、コロナ禍で訪問をキャンセルしたこともあっただけに、今回の撮影で久しぶりに現地に足を運び、感慨深いものがあった。
「大船渡のホテルに泊まったんですけど、目の前で花火がいっぱい上がって、屋台もたくさん出て、すごくにぎやかだったんです。前に来たときは、そのホテルも私たちがメインの団体として泊まっていて、周辺の食事できる施設も予約が取りやすい状況でしたが、今回行ったときは駐車場がどこも満車で、スーパーに行って地の魚を食べたいなと思っていったんですけど、お刺身がほとんど売り切れで。それは残念と思いながら、活気が戻ってきてることが何よりうれしかったです」