――ほかに印象に残っている現場でのエピソードがありましたら教えてください。
井之脇:ホームセンターのシーンは3日間くらい昼夜逆転で撮影して、夕方に入って支度して朝日が昇る頃に終わるという、けっこうしんどい撮影だったのですが、香取さんが気を使って「あ~疲れた!」「あ~眠たい!」ってあえて明るく言ってくださっていて、そのおかげでみんな「疲れた」って口にできました。言いづらいことを笑いに変えながらおっしゃって、それで現場が和やかになっていて、すごく素敵だなと思いました。
――座長がそう言ってくれると、皆さんも本音を言えるし、明るい雰囲気になりそうですね。
余:そうですね。権力をかざすのではなく、静かなうちに親分になってくれている感じで、とても安心感がありました。
香取:静かなる親分です!(笑)
――香取さんは座長としてどんなことを意識されていたのでしょうか。
香取:嫌な空気は嫌いだから、「何時までやるんだよ」とか言うのは嫌いなんですけど、「疲れた」をさわやかに言うのは面白いなと。本音の「疲れた」「眠い」というのを、「あ~疲れた!」「いや~眠いね!」って。それで雰囲気がよくなると言ってくれますが、僕は単純にそれが好きなんです(笑)
――自分が好きとおっしゃいましたが、現場の空気が悪いのは嫌いということで、やはり全体のことを考えていらっしゃるんだなと。年齢や経験を重ねられて、そういう意識が増してきたのでしょうか。
香取:それは子供の頃からですね。小学生のときからこの世界で働いていて、そうではない空気でいたいのかなと。
――最後に、この作品に参加したことで気づけたことや学べたことをお聞かせください。
余:いろんな形の愛があって、SNSのデスノートに発散したとしても、直接話し合ったり向き合って乗り越えていて、結局は根本に愛があるから解決していくことなんだなと。いろんな年代の人たちの悩みといっても、そこが一番大切なのだなと感じました。
井之脇:若槻でいえばマリッジブルーになって悩んでいるというのは、自分の将来の不安でありつつ、相手ありきで悩んでいるという事でもあると思うんです。相手のことをそこまで深く考えられるって素敵なことだなと感じました。
香取:言葉を声に出すことは大切だとずっと思ってきましたが、この作品を通じて改めて必要だなと思いました。裕次郎と日和ももうちょっと早くから声に出して思いを伝えられていたらここまでの状況にはなっていないのかなと。そういうときに愛を持ってさわやかに「疲れた~!」って言えたらいんじゃないでしょうか(笑)
1977年1月31日生まれ、神奈川県出身。1991年にCDデビューし、『NHK紅白歌合戦』に23回出場。2017年9月に稲垣吾郎、草なぎ剛と「新しい地図」を立ち上げた。近年の主な出演作は、ドラマ『家族ノカタチ』(16/TBS)、『アノニマス~警視庁“指殺人”対策室~』(21/テレビ東京)、映画『ギャラクシー街道』(15)、『クソ野郎と美しき世界』(18)、『凪待ち』(19)など。また、スタイリスト・祐真朋樹氏と共にショップ「JANTJE_ONTEMBAAR」を展開。ルーヴル美術館で個展を開くなど、多岐にわたって活躍している。bayfm『ShinTsuyo POWER SPLASH』、ABEMA『7.2新しい別の窓』にレギュラー出演中。
1995年11月24日、神奈川県出身。子役としてドラマ『柳生十兵衛七番勝負 最後の闘い』(06)でデビューし、映画やドラマ、CMなどで幅広く活躍。近年の出演作はドラマ『義母と娘のブルース』シリーズ、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(20)、『俺の家の話』(21)、『失恋めし』(22)、『ちむどんどん』(22)、映画『サイレント・トーキョー』(20)、『ONODA 一万夜を超えて』(21)、『ミュジコフィリア』(21)、『猫は逃げた』(22)など。10月21日よりTBS系列のドラマ『クロサギ』に神志名役で出演予定。
1956年5月12日生まれ、神奈川県出身。劇団「東京壱組」の活動を経て、映画・ドラマへと活動の場を広げる。2008年度、毎日映画コンクール田中絹代賞受賞のほか、『おくりびと』(08)、『ディア・ドクター』(09)、『あなたへ』(12)で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を獲得するなど受賞歴多数。また19年には紫綬褒章を受章している。近年の主な映画出演作に、『後妻業の女』(16)、『シン・ゴジラ』(16)、『おもてなし』(18)、『ステップ』(20)、『総理の夫』(21)、『ノイズ』(22)、『冬薔薇』(22)などがある。
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