東京工科大学は9月8日、バクテリア由来の生分解性プラスチックの一種である「ポリヒドロキシ酪酸」(PHB)が、酪酸菌優位の腸内細菌叢を誘導する可能性が高いことを証明したと発表した。

同成果は、工科大 応用生物学部の佐藤拓己教授によるもの。詳細は、バイオテクノロジーと生物医学に関する全般を幅広く扱うオープンアクセスジャーナル「Journal of Biotechnology and Biomedicine」に掲載された。

腸内の理想的な環境は弱酸性であり、それを保つためには、腸内細菌が酢酸、乳酸、プロピオン酸、酪酸を産生する必要があり、このうち、酪酸を優位に生産するものが酪酸菌と呼ばれている。

ほ乳類にケトン体を供与するものとして、PHBに注目して2017年頃から研究を続けてきた佐藤教授は、ほ乳類の腸内細菌叢を酪酸菌優位に変えることを発見し、新しいプレバイオティクスとして「ケトバイオティクス」を提唱するに至ったという。

PHBは、3-ヒドロキシ酪酸(ケトン体)のポリエステルであり、ポリヒドロキシアルカン酸の一種とされる。主に生分解性プラスチックとして注目されていたが、腸内細菌叢を酪酸菌優位に変えるキーとなる物質であるケトン体で構成されており、最近では食品への応用も期待されるようになっているという。

そうしたPHBを分解するには、そのエステル結合を加水分解する必要があるが、ヒトを含むほ乳類の消化酵素ではそれが不可能なため、PHBはそのまま小腸を通過して大腸にまで達するという。それを腸内細菌が取り込み、自身の酵素でケトン体に加水分解。その結果、産生するケトン体は、腸内細菌によってエネルギー基質として利用され、特に酪酸菌の増殖を促進する効果があると考えられている。またケトン体は大腸管腔にも放出され、大腸上皮からほ乳類の体内に吸収される。その結果、ほ乳類の血液中のケトン体の濃度も一定程度増加することから、二重に健康に寄与するという。

  • ケトン体のポリエステルであるPHB

    ケトン体のポリエステルであるPHBは、ヒトは分解できないが、腸内細菌の酵素は加水分解が可能。それによりケトン体が大腸内に遊離し、酪酸菌などを活性化され、酪酸が大腸管腔内に放出される。また、ケトン体はヒトを含むほ乳類の大腸からも吸収され、健康効果を発揮する (出所:工科大Webサイト)