フジロックと同様に、YouTubeによる動画配信を活用して大きな成功を収めている海外のイベントがあります。佐々木氏はその代表的な事例として、米国カリフォルニア州ロサンゼルス郊外で4月に開催される音楽フェス「Coachella Valley Music and Arts Festival」(コーチェラ・フェスティバル)を挙げています。2022年には宇多田ヒカルが88risingのアーティストとともに出演して話題を呼んだ、グローバルな野外イベントです。
これまで海外で開催される魅力的な音楽イベントには、なかなか気軽に足を運べませんでした。しかしYouTubeによる動画配信があれば、自分の好きなアーティストの活躍を海の向こうからでも応援できます。
「アーティストにとって、YouTubeのライブ配信を通して作品を世界中のオーディエンスに届けられるメリットも大きいと思います。私自身も日本のアーティストがYouTubeを活用して世界に羽ばたいてほしいと考えています」(佐々木氏)
筆者は今年のフジロックに足を運んでいた友人から「The HU」(ザ・フー)というモンゴルのロックバンドがとてもよかったと教えてもらいました。直後に音楽配信サービスでバンドのプレイリストをチェックしてみたところ、とても気に入ったのでさっそく自分のライブラリに追加しました。魅力的な音楽やアーティストと新たな出会いが築けることもフェスの醍醐味です。
グーグルの音楽配信サービスであるYouTube Musicでは、フジロックに出演するアーティストのラインアップを集めた楽曲プレイリストも公開していました。YouTubeと連動するマルチフォーマットを活用して、フジロックの感動を何度も繰り返しかみしめられる面白い試みだと思います。
さまざまなイベントとYouTubeの連動にも期待
日本の音楽カルチャーが世界中のファンとつながることを、積極的に応援することもYouTubeの大切な役割であると、佐々木氏は語っています。
「YouTubeのユーザーが好きなアーティストについて深く知りたいときにYouTubeの公式チャンネルを訪れて、動画やトークを見て楽しみ、YouTube Musicで音楽をゆっくりと聴いて作品の世界観に深く入り込める導線をつくることが私たちの役目です。アーティストの方々にも、多くのファンと出会い、キャリアアップを実現するために最良なプラットフォームとしてYouTubeを活用してもらいたいです」(佐々木氏)
筆者もいち音楽ファンとして、YouTubeと音楽フェスによるライブ配信の連携がもっと拡大してほしいと期待しています。また、音楽フェスとは少し毛色が違いますが、YouTubeでは毎年独自に「YouTube FanFest」という多種多様なジャンルのクリエイターやアーティストが参加するイベントを12月に開催してきました。今年のイベントがオンライン配信を含めて、どのような形で開催されるのか、詳細の発表がとても楽しみです。
もちろんフジロックのオンライン配信は、来年もぜひ豪華に実現してほしいです。筆者はライブ配信の合間に挿入される会場の様子を動画で見ながら、来年はぜひ現地に足を運んでみたいと思いました。オンサイト・オンラインの両輪で、ますます大きく育つフジロックの今後の取り組みから目が離せません。