高い演技力でドラマや映画に引っ張りだこの子役・稲垣来泉にとって、綾野剛演じる主人公の娘役を務めているTBS系日曜劇場『オールドルーキー』(毎週日曜21:00~)は、忘れられない大切な作品になったようだ。本作の撮影において「演技が楽しい!」と心から感じ、「将来、女優の道に進みたい」と確信したという。

  • 稲垣来泉 撮影:蔦野裕

『オールドルーキー』は、現役を引退した元サッカー日本代表の主人公・新町亮太郎(綾野剛)が、スポーツマネージメントの世界でセカンドキャリアを切り開いていく物語。

ヒロイン・暢子の幼少期を演じたNHK連続テレビ小説『ちむどんどん』での演技も絶賛された稲垣が、本作では新町家の長女・泉実を演じている。サッカー選手である父・亮太郎のことを誰よりも誇りに思っていた泉実は、父が突然現役を引退したことが受け入れられず2人の関係に深いヒビが入るも、新しい世界で頑張ろうと前を向く姿を見て応援するように。その心の変化を繊細に表現し、再び父の良き応援者となって物語を盛り上げている。

泉実役をオーディションでつかんだ稲垣。「オーディションのときに納得いく演技ができなくて、まさか受かると思わなかったので、受かったと聞いたときは本当にうれしかったです」と出演が決まったときの心境を明かす。

オーディションで演技したのは、第4話で描かれた亮太郎の引退試合で、泉実が亮太郎に抱きついて「カッコよかったよ、パパ」と涙ながらに伝えるシーン。「家で練習していたときはしっかり泣くことができたのですが、オーディションではあまり泣けなくて」と本人的には悔しさを感じるも、見事合格した。

現場に入ると、綾野をはじめとするキャスト・スタッフの本作にかける思いに感動し、稲垣自身もより気持ちが高まったという。

「綾野さんや監督さんが本気でこの作品を作ろうとしている思いが伝わり、現場に入った瞬間に泣けてきてしまいそうになり、家でも『オールドルーキー』のことを考えると気持ちが高まって、本当にこの作品への思いは強いです。本気でやっている方たちに並べるような演技が私もできたらと思って挑みました」

オーディションで演じたシーンも本番では納得いく演技ができたそうで、実際、多くの視聴者の心を揺さぶる名シーンとなった。「綾野さんや榮倉(奈々)さんたちが役になりきって雰囲気を出してくださるので、私は何も考えず泉実ちゃんとしていられて、自然と涙が出てきました」

ちなみに、稲垣と泉実の性格はだいぶ違うのだという。「泉実ちゃんは大人な感じの女の子ですが、私は明るくて子供というか、泉実ちゃんとは真逆の性格です。なので台本をしっかり読んで泉実ちゃんの気持ちをちゃんと理解するようにしています」

どの作品でも「台本を読んでその子の気持ちを理解して、あとはその場の雰囲気に任せてします」とのことで、「周りの方たちのおかげで納得のいく演技ができていて、この作品だと泉実ちゃんの魂を体の中にすとんって入れたら、自然に言葉が出てきて涙も出てきます」と語る。台本で役をしっかり理解した上で、最終的には共演者の演技を受けて演じるからこそ、とてもリアルな演技になるのだろう。

役をしっかりつかめるようになったきっかけを尋ねると、石原さとみの娘役を演じた映画『そして、バトンは渡された』(2021)を挙げた。

「前田(哲)監督が『台本に書いてあるのはその子の感情で、あなたはその子の感情になっているから、台本にはこういうセリフが書いてあるけど、あなたが言いたいように言いなさい。20分でも30分でもみんな待つから』と言ってくださって、そこで殻が破けた感じがしています」

それ以降の作品は「自分が演じたいと思う通りにできるようになった気がします」と手ごたえを感じられるようになり、『ちむどんどん』も『オールドルーキー』での好演にもつながっているようだ。