いまやヘッドホン/イヤホンの必須機能とされつつある、「ノイキャン」ことノイズキャンセリング(NC)機能。マイクで集音したノイズから逆位相波を計算し、それをノイズに重ね合わせることで打ち消す「アクティブノイズキャンセリング」が技術の根幹ですが、そう単純なものではありません。
演算を伴うだけにICの性能というデジタルパワーが求められ、マイクの位置/向きや密閉性の確保といったアナログなノウハウも必須です。身近な存在となっただけに競争も激しく、新製品は“より効くノイキャン”でなければなりません。
そのような状況に気を吐く存在が、ソニーの“1000Xシリーズ”。完全ワイヤレスの「WF」とオーバーヘッドの「WH」の2タイプが展開されていますが、どちらも“効き”に対する評価は高く、しかも新モデルが登場するたびSNSでは効果アップの声が聞こえてきます。
1000Xシリーズは、2016年秋発売の「MDR-1000X」を振り出しに、2017年の「WH-1000XM2」、2018年の「WH-1000XM3」、2020年の「WH-1000XM4」と、着実に進化し続けてきました。
個人的に印象が強いのは、2018年モデルの「WH-1000XM3」。ソニー独自開発のプロセッサ「QN1」を搭載することで、アクティブノイズキャンセリングの性能が飛躍的に向上しました。NCの効きは、いかに精緻な逆位相波を高速に生成するか。言い換えればICの演算能力と独自機能にNCの効きがかかってくるため、フィルタ処理に長けた専用プロセッサの開発へと踏み込むのは理にかなっています。
もうひとつ1000Xシリーズで見逃せないのが、マイクの取り付け位置や外部ノイズ遮断性能(パッシブNC性能)といったアナログ的な部分です。マイクをいくつ用意するか、どの向きに取り付けるかによってNCの性能は変化しますし、イヤーパッドの素材や密着性を考慮しなければパッシブNC性能は向上しません。WHシリーズの“効くノイキャン”は、ここにも高度なノウハウがあることは確かです。
最新モデルの「WH-1000XM5」(5月27日発売/実売49,500円前後)は、「QN1」に加えて新開発の統合プロセッサ「V1」を採用し、演算周りの性能が向上しました。NC効果を最適化する「オートNCオプティマイザー」、8個のマイクを使った「マルチノイズセンサーテクノロジー」のほか、ウォークマンで培った技術の導入など、音質面でもテコ入れが図られています。
プロセッサ周りなどデジタルな部分、パッシブNCに代表されるアナログな部分、そしてオーディオ機器の根源ともいえる音質部分。この3方向から、WH-1000XM5のあれやこれやをソニー1000Xシリーズ企画・開発チームに訊いてみました。