• 実衣役の宮澤エマ

また、もう1人、三谷氏の想像を超えてきたというキャラクターが、北条時政の次女で義時の同母妹である実衣だ。演じる宮澤エマは、舞台を主戦場とするミュージカル俳優だったが、連続テレビ小説『おちょやん』(20~21)でお茶の間でも注目されて以降、映画やドラマでも引っ張りだこである。

三谷氏は実衣について「やはり実衣も、宮澤エマさんが演じたことが、大きかったと思います」と、宮澤あってのキャラクターだと強調する。

「最初は政子の話し相手として、何か茶々を入れるだけのキャラクターのつもりでいました。でも、いろんな資料を調べて書き進めていくなかで、宮澤さんが演じている姿を見て、それだけではもったいない気がしてきたんです。それで、実衣はもっと成長していくべき人だし、そんな姿を僕自身も見てみたいと思いました。頼朝が死んだ直後、少し彼女の権力欲の片鱗が見えましたが、それは脚本を書き始めた当初では、思いもしなかったです」

頼朝の死後、鎌倉幕府2代将軍となった源頼家(金子大地)。若さゆえか独裁政治に暴走する頼家のストッパーとして誕生したのが、タイトルとなった“鎌倉13人衆”だ。今後も、歴史書『吾妻鏡』をベースにしつつも、三谷ならではのオリジナルの味つけがされた巧妙なすストーリーが展開されていくに違いない。

では、現実とフィクションのバランスのとり方を、三谷氏はどう捉えているのだろうか。 「この時代において、実際にあったこととフィクションとのメリハリに関しては、極端な話、僕は全部がフィクションだと捉えられるとも思っています。ある意味、神話のようなものなので、そこは脚本を書いていてとても魅力的な点です。もしかして、実際にあったこととリンクしているエピソードがあるかもしれないけど、そこも含めて、僕のなかでは全部フィクションのつもりで書いています」

それは、稀代のストーリーテラーである三谷氏ならではの捉え方かもしれないが、その分、この先に待ち受ける様々な仕掛けを期待せずにはいられない。

■三谷幸喜
1961年7月8日生まれ、東京都出身の脚本家。1983年に劇団東京サンシャインボーイズを結成し、多くの舞台を手掛ける。1993年に『振り返れば奴がいる』で連続テレビドラマの脚本家としてデビュー。1994年にドラマ『古畑任三郎』シリーズで人気脚本家としての地位を確立。1997年には映画『ラヂオの時間』で映画監督デビューし、『THE 有頂天ホテル』(06)、『ザ・マジックアワー』(08)、『ステキな金縛り』(11)などを手掛けていく。映画監督作の近作は『記憶にございません!』(19)。大河ドラマの脚本は『新選組!』(04)、『真田丸』(16)に続き3本目となる。また、大河ドラマ『功名が辻』(06)、『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)には役者として出演した。

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