パナソニック インダストリー、名古屋大学(名大)、山形大学、秋田大学の4者は8月25日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で、宇宙探査における「課題解決型」研究テーマとして、アルミニウムと同等の電磁波遮蔽性能を有しながら、アルミニウムの約270分の1の軽さという、カーボンナノチューブ(CNT)と熱硬化性樹脂を組み合わせた「超軽量電磁波遮蔽材料」技術の共同研究を、2022年6月から2024年6月までの24か月の期間で開始したことを発表した。
物体は軽量であるほど移動に消費するエネルギーが少なくて済む。それも、摩擦のない宇宙空間(地球低軌道には空気抵抗が若干ある)で利用される人工衛星や探査機ともなればなおさらである。そもそも、打ち上げる時点で同じ軌道までなら軽いほど少ないエネルギーで済むし、同じエネルギーを消費するのならより高い軌道へと投入することができる。
そのため、新規材料の開発や構造の工夫などにより、耐久性を維持しながらの軽量化の研究が常に行われてきた。そうした研究の1つが、機体の数十%もの質量を占める機内通信・給電用ケーブルの無線化による軽量化だという。その実現に対しては、電磁両立性(EMC)確保のため、高度な電磁波遮蔽技術が必要となる。
また、地上空間におけるドローンやeVTOLといった環境負荷が低い電動航空機の普及に向けても同様に、軽量化と電磁波対策の両立が求められている。さらに、5G・6Gといった無線通信の高速化・高周波化に伴い、ミリ波帯からテラヘルツ波帯への対応と軽量化を両立する電磁波遮蔽材料の必要性が高まると予測されている。
実はパナソニック インダストリー、名古屋大学、山形大学、秋田大学がJAXAと共同研究を行うのは、今回が初めてではない。JAXA宇宙探査イノベーションハブ「アイデア型」研究テーマの1つとして、2020年にカーボンナノチューブ(CNT)の研究をスタートさせている。そこで培った内容をさらに発展させるべく、2021年に行われたステップアップ審査により選考され、2022年6月よりスタートしたのが、今回の超軽量電磁波遮蔽材料技術の共同研究となる。
なおJAXA宇宙探査イノベーションハブは、将来の宇宙探査への応用と、地上における事業化による産業振興や新産業の創出の両立を目的として2015年に設置された組織であり、企業・大学・研究機関などの研究開発者から提供された宇宙探査に関する技術情報を基に、JAXAからの課題を設定して研究を募る「研究提案募集」により、オープンイノベーションの研究開発が進められている。