キヤノンが、RFマウントの交換レンズ2本を同時に発売します。手ごろな価格の“非Lレンズ”ながら、試用した大浦カメラマンいわく「描写力はLレンズ級」と太鼓判を押します。レンズ自体も小型軽量に仕上げられており、APS-Cミラーレス「EOS R7」「EOS R10」ユーザーも注目できる意欲作の実力を試してみました。

  • 8月26日に販売が始まる、RFマウント用の交換レンズの新製品「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」(左)と「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」(右)。いずれも、Lレンズではないスタンダードな“Non L”レンズながら、申し分のない写りが得られます。コンパクトに仕上がった鏡筒も魅力

大口径の広角マクロ「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」

キヤノンのRFマウントレンズには、一眼レフ用のEFマウントレンズと同様に鏡筒先端に赤帯を巻いたレンズと、赤帯のないレンズとに大きくクラスが分けられます。前者は“Lレンズ”と呼ばれ、圧倒的な光学性能が特徴。高価なこともあり、プロやアドバンスドアマチュアに好まれることの多いレンズです。一方、後者は特別な呼び名はありませんが、不足のない写りとLレンズよりも安価であることが特徴となります。そのスタンダードクラスのレンズのラインナップに、「RF24mm F1.8 MACRO IS STM」と「RF15-30mm F4.5-6.3 IS STM」の2本が追加されました。

RF24mm F1.8 MACRO IS STMは、その画角から「RF16mm F2.8 STM」と「RF35mm F1.8 MACRO IS STM」の間を埋めるレンズとなります。広角単焦点レンズというと、一般に焦点距離28mmをラインナップに加えることが多いのですが、その場合焦点距離16mmとでは画角の違いが大きすぎ、焦点距離35mmとではその差が小さいこと、さらに一般的な標準ズームはワイド端24mmスタートが多く馴染みのある画角であることなどから、この焦点距離に落ち着いたものと考えられます。開放絞り値はF1.8と24mmとしては大口径であるのも特徴。広角レンズながら、被写体を背景から浮き立たせることも撮影条件によっては容易としています。さらに、レンズ単体で補正効果5段、手ブレ補正機構を内蔵するEOS Rシリーズと組み合わせれば協調補正により6.5段とする強力な手ブレ補正機構の搭載により、手持ち撮影の可能性もぐっと広がっています。

  • RF24mm F1.8 MACRO IS STMは、位置付け的にRF16mm F2.8 STMとRF35mm F1.8 MACRO IS STMの間を埋めるレンズとなります。フィルター径はφ52mm。発売は8月26日で、実売価格は96,800円前後

光学系はRFレンズらしく大口径マウント、ショートバックフォーカスに最適化されたものとし、さらにUDガラスおよびPMo非球面レンズをそれぞれ1枚ずつ配置することで色のにじみなどを補正。スペックだけ見ても、大いに写りが期待できそうです。実際、その描写はLレンズと明確な違いは見受けられないもの。しかも、現代の単焦点レンズらしく絞り開放からエッジが立ち、コントラストの高い写りが得られます。カメラのレンズ光学補正機能を最大限写りに活かしているのも、スタンダードクラスのRFレンズの特徴ですが、本レンズも例外ではありません。ディストーションや周辺減光はレンズ光学補正機能により良好に補正され、Lレンズの写りと見比べても引け目を感じるようなことはありません。

  • RF24mm F1.8 MACRO IS STMは、ショートバックフォーカスに最適化された光学系を採用しています

  • RF24mm F1.8 MACRO IS STMの鏡筒に備わるスイッチ。機能的にはシンプルで分かりやすく思えます

モデル名に“MACRO”と記されているように、最大撮影倍率0.5倍のAFハーフマクロ撮影が楽しめるのも本レンズの特徴です。最短撮影距離は0.14mで、広い画角を活かした表現や、明るい開放絞りによる大きなボケを活かしたマクロ撮影が楽しめます。AFもステッピングモーターの採用で高速で静寂性が高く、チョウのような昆虫や小動物の撮影も気軽に楽しめます。フルサイズEOS Rシリーズではちょっと広めのワイドレンズとしてさまざまなシーンで活躍しそうですし、APS-Cサイズのセンサーを搭載した「EOS R7」「EOS R10」への装着では38mm相当の画角のレンズとして出番は多そう。高次元でバランスの取れた広角単焦点レンズといえます。

  • 絞りは開放F1.8。条件にもよりますが、ピントを合わせた被写体を背景から浮き上がらせることも容易。周辺減光の発生など気になる写りは皆無と述べてよいレベルです EOS R5・RF24mm F1.8 IS STM・絞り優先AE(絞りF1.8・1/3200秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • 光線の状況に因るところもありますが、単焦点レンズらしい立体感ある写りです。作例を見る限り色のにじみなど見受けられず、すっきりとしたエッジです EOS R5・RF24mm F1.8 IS STM・絞り優先AE(絞りF4.0・1/2500秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • こちらは絞りF5.6。画面周辺部まで文句の付けどころのない圧倒的な解像感です。ディストーションもよく抑えられており、Lレンズに迫るどころか肩を並べる描写特性と述べてよいでしょう EOS R5・RF24mm F1.8 IS STM・絞り優先AE(絞りF5.6・1/500秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • 絞りはF2.8。他の作例でも記していますが、シャープネスは高く、コントラストも良好です。背景はエッジの残る程度のボケ具合ですが、ナチュラルで嫌味のないものです EOS R5・RF24mm F1.8 IS STM・絞り優先AE(絞りF2.8・1/4000秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • 最短撮影距離は0.128m。ぐっと被写体に迫った撮影が楽しめます。絞り開放ですとボケも大きく、背景から浮き上がらせることも容易。ちなみに、写真の将棋の駒は大判用のため、一般的なものよりも数倍以上大きいものとなります EOS R5・RF24mm F1.8 IS STM・絞り優先AE(絞りF1.8・1/800秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • ワイドレンズが好きなEOS Rシリーズユーザーにとって、本レンズの存在は魅力的。写りに加え、手ブレ補正機構を内蔵しているなど完成度の高いレンズのように思えます EOS R5・RF24mm F1.8 IS STM・絞り優先AE(絞りF5.6・1/1250秒)・ISO100・WBオート・JPEG

  • ディストーションもよく補正されています。ちなみにレンズ光学補正機能については、本レンズをカメラに装着すると歪曲収差補正は自動的にONに切り替わります EOS R5・RF24mm F1.8 IS STM・絞り優先AE(絞りF2.8・1/300秒)・ISO100・WBオート・JPEG