また、結ばれなかった最愛の人・平良三郎役の片岡鶴太郎について「オンエアを観てきて、やっぱり鶴太郎さんはかっこいいと思います。着流しで出てきて、鶴見で潔く生きている感じが素敵です」と語った。
そんな三郎と再会したシーンについては「三郎さんとは何年も会ってなかったけど、暢子を通して関わることになったわけです。会いたいけど、会いたくないというか、年をとった自分を見られたくないといった女心みたいなものもちらっと見えるように演じました。また、三郎さんとの再会シーンはとても短いのですが、大人な感じで、上手く撮れたんじゃないかなと思います(笑)。ほかにも、房子と三郎がカットバックで同じことをしているシーンもなかなかいい感じです」と手応えを口にする。
そして、ついに暢子が青柳和彦(宮沢氷魚)とゴールインし、結婚式をフォンターナで挙げた。「すごく素敵な結婚式になりました」と満面の笑みを見せる原田。
「そこに三郎さん絡みの話が出てきて、それがフォンターナという店と上手くかみ合っていくシーンになります。そのくだりについて、プロデューサーに『最初から暢子の結婚式はフォンターナでやると決めていたのですか?』とお聞きしたら、途中でそこに持っていこうということになったとのことでした。私はディテ-ルまできちんと作り込まれたフォンターナのセットが本当に好きなんです。アンティークのものがきちんと置かれ、どこを切り取っても絵になるし、私たちが何カ月間かそのなかで動いたことにより、まるでフォンターナという店が本当にあるかのように生き生きしてきた感じもしていました」
その挙式のシーンでは、黒島の美しい花嫁姿も忘れられないと言う原田。「黒島さんが琉装で出てくるんですが、すごくかわいいんですよ。髪を結って琉装をまとった佇まいを見て、さすがは沖縄の子だなと感心しました。黒島さんは真っ直ぐな人だし、きっとすごく強いのものを持った方だとも思いました。彼女はまだ25歳でこれからですから、とても楽しみです。撮影期間は芝居上で台詞をやりとりするのが精一杯の数カ月でしたが、これから黒島さんがどういう人生を生き、どんな仕事をして行くのかなと、房子のように、お母さんのような気持ちで、ずっと彼女のことを見続けていくと思います」
房子から料理人としての知識だけではなく、人として大切なものも吸収してきた暢子。2人のシーンは、原田自身の黒島に対する大きな“親心”が上乗せされていたからこそ、よりエモーショナルになったのかもしれないと、今回の取材で実感した。
12月26日生まれ、東京都出身。1974年に女優デビュー。1976年、『大地の子守歌』、『青春の殺人者』などに出演し、キネマ旬報主演女優賞など多数受賞。『火宅の人』(86)で第10回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、『愛を乞うひと』(98)で第22回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など数多くの賞を受賞。他にも黒澤明監督『乱』、『夢』をはじめ数々の名匠の作品に出演。近作の主な出演作は、ドラマ『俺の話は長い』(19)、『星とレモンの部屋』(21)、『津田梅子~お札になった留学生~』(22)、映画『世界から猫が消えたなら』(16)、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』(18)など。菅田将暉とW主演を務める『百花』が9月9日公開。
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