女優の原田美枝子が、連続テレビ小説『ちむどんどん』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか)で、黒島結菜演じるヒロイン・比嘉暢子が勤めるレストランのオーナー・大城房子役を好演している。『水色の時』(75)以来47年ぶりの朝ドラ出演となった原田。気骨のある凛とした佇まいの房子役はハマリ役となった。
原田は反響について「やはり朝ドラの影響力の大きさにびっくりしました! たくさんの方が『毎日観てますよ』と言ってくださるし、普段はドラマを観ない友人からも『ビデオを録って観てるよ。いい役だね』と言ってもらいました。前回出演の『水色の時』は47年前でしょ(笑)。レギュラー出演というよりは、大竹しのぶさん演じる主人公の兄弟の友達役で、本当に少ししか出てなかったので、あまり記憶もないんですが」と照れ笑いする。
『ちむどんどん』は、今年、本土復帰50年を迎えた沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかけるヒロイン・暢子ら4兄妹の奮闘を描く物語。房子は暢子が勤めるイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」のオーナーで、暢子の親戚でもある。17歳で屋台を始めたというたたきあげの経歴を持つ房子。日本料理店や洋食屋を経て、これからという時に戦争が勃発、戦後は闇市でゼロから再スタートしたという苦労人だ。料理や食文化に精通していて、知識人からも一目置かれている房子は、非常に芯の強い女性だが、実はとても愛情深い人でもある。
原田はそんな房子役にとても惹かれたそうだ。「どうしてもこの年代になると、面白い役がなかなかなくて。やはり優しいお母さんやおばあちゃんのように、みんなを見守るような存在の役が多くなってくるんです。もちろんそういう役も素敵だと思いますが、長く生きてくると本当にいろんなことを感じるし、大城房子という役は、そういう思いを見せられる役どころだと思ったので、とってもうれしかったです」とオファーを快諾した。
原田は房子について「いつもカッコよくありたい」と意識して演じているという。「屋台から始まり、少しずつ努力して、フォンターナまで行き着いた人です。今は女性が働くのは当たり前の時代ですが、当時はそうじゃなくて、結婚もせずに仕事だけやっていくとなると、風当たりも相当強かったと思います。そんななかで昭和を生き抜き、あれだけ大きなお店を銀座で持てたこと自体がすごいし、それを一流の店にして、いろんな人たちを迎え入れている房子は実にやり手だなと。ふつうは人生がいろいろ上手くいかなくて愚痴を言ったりすることもあると思いますが、房子は言い訳をしないで前へ前へと進んでやってきた人で、本当にすごい方です」とリスペクトしている。
房子役には、演技派女優としてキャリアを重ねた原田自身の人間力や人生経験の豊かさが加味され、より魅力が際立っている気がするが、房子との共通点とは?
「どちらかといえば私も男っぽい性格で、あまりグチグチ言わないところは似ているかもしれないです(笑)。ただ、役作りとして今回すごく上手くいったことの1つは、演出部からの提案でお着物を着たことかなと。房子はイタリアに修業へ行っていたので、イタリアから日本を見た時、自分は何も日本のことを知らなかったと気づいた。それで帰国後に日本文化をもっと大事にしなきゃと思い、着物を着ているという設定になったんです」
確かにピンと背筋を伸ばし、颯爽と着物を着こなしている房子は、その佇まいだけで風格を感じさせる。「房子の着物姿は、すごく収まりのいい着こなしというよりは、外国人から見た日本人の女性というイメージです。キメすぎると旅館の女将みたいになってしまうから、イタリア料理店のオーナーという仕事なので、羽織が男性のジャケットのような見え方になるといいかなと。実際に衣装がすごくいい効果を出してくれたと思いますが、それは演出サイドからの提案あってのもので、本当に助かりました」とスタッフ陣に心から感謝する。
本場イタリアでも研鑽を積んだ房子は、暢子と“ペペロンチーノ対決”で勝利したり、従業員が一気に辞めた時、自身が厨房に入って、テキパキ指示を出しながらフライパンをふるったりしたシーンも描かれた。
「普段から料理はしていますが、やはりフライパンを返す所作がなかなか上手くいかなかったです(苦笑)。また、劇中の包丁は自分が使っているものの1.5倍ぐらいの長さだったので、素材を切っていくのが難しくて。でも、協力してくださる料理指導の方たちがとても親切に教えてくださったので、つながった映像を観たらすごく料理が上手い人に見えていてうれしかったです」と笑みを見せる。