――もともと実写ドラマの漫画化からはじまった『風都探偵』ですから、登場キャラクターもどことなく、実在する俳優さんのイメージが入って、リアリズム重視の描き方をされていますね。さらにその漫画をアニメ化することで、血肉の通った人間像が描写されている印象です。
塚田:実写がそのままアニメになった、と見えるのは『風都探偵』の個性として成功しているんじゃないかと思います。
三条:他のアニメ作品との差別化が図れていれば嬉しいですね。
――声優さんによる各キャラクターのセリフについては、ことさら『W』の俳優さんのイメージに寄せているわけでもなく、アニメならではの魅力を打ち出そうとされているのがわかります。声優さんの演技について、最初にどのようなお話をされていたのでしょうか。
塚田:僕からは「あまり実写の『W』にひきずられないように、あまり意識をせずにやってください」と椛島洋介監督に要望しました。実際、声優のみなさんはそれぞれのキャラクターイメージに合わせ、とても素敵に演じてくださっています。
三条:モノマネになってしまわないように、という点は誰もが心配していたんですよね。役者のモノマネだと、ぜったいに違和感が生じてくる。漫画のときに書いたセリフの段階で、翔太郎、亜樹子、フィリップはいつもの言い回しをしているので、彼ららしさは自然に出てきます。そこに声優さんの演技が加わって、アニメ独自の魅力を発揮してもらえたらいいなと思っていました。
――吉川晃司さんがプロデュース&作曲、松岡充さんが作詞・歌唱を担当された主題歌「罪と罰とアングラ」は発表された途端、『W』のハードボイルドな世界観にピッタリ!と評判を取りました。こちらの主題歌が作られた経緯についてお聞かせください。
三条:最初に「キャラクターたちが踊る」エンディングのイメージがあったようです。スタッフの方たちからこういう感じで行きたいんですと言われ、塚田さんが松岡さんと吉川さんをお呼びして「踊るようなタイプのエンディングを」と依頼されたんです。
塚田:みなさんご存じのように、吉川さん、松岡さんは『W』の世界を熟知しているので、微妙なさじ加減も含めてまさにハードボイルドでしょ!という主題歌を作ってくれました。『W』のときからそうでしたが、本当に素晴らしい大御所アーティストと一緒に仕事をさせてもらって、充実感がすごかったです。
三条:松岡さんが書かれた歌詞、1番と2番の歌い出しが対になっているのですが、2番の歌詞を聴いたとき、あまりの『W』愛の強さに思わず目頭が熱くなりました。まさに脚本家冥利に尽きるといいますか、映画の中で僕が考えたフレーズを大事にしてくださって、感動がこみあげてきました。
塚田:アニメスタッフのみなさんが『W』および『風都探偵』を好きでいてくれて、さまざまな部分で強いこだわりを発揮してもらっているのは、本当にありがたいと思っています。
――スタートしたばかりのアニメ『風都探偵』、これから観られる方に向けての「見どころ」をぜひ教えてください。
塚田:映像をクリエイトする作業に携わらせてもらって改めて思ったのは、今回の『風都探偵』では音楽が気持ちよく付けられているなということです。『W』と同じく、中川幸太郎さん、成瀬シュウヘイさんが手がけられていて、当時とは違う新曲でありながら、当時っぽく聞こえるという「神業」レベルで成立しているBGMの数々を楽しんでいただきたいですね。毎回、録音に立ち会わせてもらっているのですが、全編とても気持ちよく音楽が乗っている。漫画では「音」による演出ができないですから、これぞアニメならではの魅力ですね。
三条:仮面ライダー50年の歴史の中で、アニメ作品として作られたのは『仮面ライダーSD』(1993年)以来。そして、連続シリーズになったのは史上初ですよね。アニメ『風都探偵』が入口となって、漫画『風都探偵』や実写の『仮面ライダーW』および仮面ライダーに興味を持ってもらえたら、とても嬉しいです。アニメならではの見どころとして、「CGによる変身シーン」を挙げたいですね。変身エフェクトの表現や胸の筋肉の付き方など、アニメスタッフによる解釈の違いがあったりして、東映のCG班の方が観ると「なるほど、こういう見せ方があるのか」と刺激を受けるかもしれません。仮面ライダーの進化のステップにアニメ作品の『風都探偵』が立つことができれば、すばらしいと思います。漫画もただいま連載中ですので、漫画ともどもアニメ『風都探偵』をよろしくお願いします!
(C)2022「風都探偵」製作委員会