名古屋大学(名大)は8月1日、「脂肪由来間葉系幹細胞」(ASC)が「骨髄由来間葉系幹細胞」と比較して、致死性重症腎炎を改善させることを見出し、その作用機序について、投与したASCの生体内動態から解明したことを発表した。
同成果は、名大大学院 医学系研究科 腎臓内科学の島村涌子大学院生(現・コロンビア大学 博士研究員)、同・丸山彰一教授、同・大学 医学部附属病院 腎臓内科の古橋和拡 病院講師、同・田中章仁 病院助教、同・大学大学院 医学系研究科 分子腫瘍学の鈴木洋教授らの研究チームによるもの。詳細は、「Communications Biology」に掲載された。
間葉系幹細胞(MSC)は優れた再生促進能と免疫調整能があることが知られており、既存の薬剤で治療効果が期待できない難治性疾患に対しても治療効果が期待されている。そのため、現在では世界的に1000を超える臨床試験が行われ、難治性疾患においてその有効性が示されているという。実際、研究チームも「難治性IgA腎症」に対して、ASCを用いた臨床研究を実施中としている。
MSCはその高い治療効果から新たな再生医療として注目され、その治療機序に関しても精力的な研究が行われているが、どれも単一の分子ではその作用機序に関して完全には説明ができていないという。そのため、その作用機序が解明されれば、MSCの治療効果をより高めることができるだけでなく、さらには細胞を投与せずに治療可能な創薬への手がかりをつかむことも可能になるとされている。
これまでの動物モデルを用いたMSC研究では、マウスやラットのMSCの使用がほとんどだったが、動物種が変わるとMSCの作用や機序も変わることが想定されることから今回の研究では、ヒトMSCを使用することで、臨床へ直結する機序解析を行うことを目指すことにしたという。