PCゲームで遊ぶ。滑らかな映像や立体音響/NCを体感

続いて接続先をゲーミングPCに切り替え、ローンチ時にもアピールされていた「エルデンリング」をプレイしていきます。ハードなレベルデザインで知られるフロム・ソフトウェアの最新作として高い評価を受ける本作は、ゲーム内の世界をシームレスに移動できるオープンフィールドが採用されており、広大な世界を描く美しいグラフィックにも定評があります。

  • エルデンリングをプレイする工藤氏

今回はPC版でのプレイということで、画質設定も最高のセッティングでスタート。ゲーム冒頭のイベントを終えてリムグレイブの地に降り立つと、はるか遠くの背景まで緻密に描写される、圧巻の光景が広がっていました。冒頭では教会のような薄暗い建物から外へ出ていくのですが、扉を開けた際の薄暗い室内と明るい屋外の明暗差が非常に大きく、シーンの変化を印象的に彩ります。

  • 圧巻の眺めを高画質で描き出す

また、M9に搭載されている「ブラックイコライザー」機能によって、明暗差がありつつも、明るい箇所は白飛びしないまま、暗い箇所も黒つぶれすることなく細部まで見通しの良い表現に。攻略する上でも純粋に見やすく、影に隠れたアイテムなども発見しやすくなりそうです。

  • やや暗めのシーンでも見やすい

遠くにいる小さな敵まで見渡すことができるため、ゲーム難易度が高い本作ではなるべく強敵を避けて先に進んでいく……というのも攻略法のひとつですが、せっかくなので今回は、スタート地点のすぐ近くにいるくせにメチャクチャな強さを誇る強敵「ツリーガード」に挑んでみました。

しゃがんで草陰に隠れながらスキを伺っていると、プレイヤーキャラクターがジリジリと草をかき分ける音や、ツリーガードが騎乗する馬の重厚感のある足音など、H9による質感に優れたSEが緊張感をあおります。PCとの接続時には専用のPCソフトウェア「INZONE Hub」で立体音響をオンにすると、定位のピタリと合った空間表現が実感できます。

ほどなくして後ろから斬りかかり、戦闘がスタート。大きなハルバードを力強く振り回すツリーガードとの戦いは極めてダイナミックで、大振りのスイング音がかすめるたびに冷や汗が流れました。

本作はPC版でもフレームレート上限が60fpsで固定されていますが、M9はPCとの接続時に「NVIDIA G-SYNC」によるVRRに対応しているため、そちらをオン/オフして違いを確かめてみることに。ちなみにPS5との接続時はM9の本体操作で設定しましたが、PCではINZONE Hubからも簡単に設定できます。

  • 本体設定でAdaptive-Sync(VRR)をオン/オフできる

敵の強力な攻撃を回避しつつ、そのスキを突いてこちらからも攻撃を入れていくというのが、エルデンリングにおける近接武器の主な戦い方。当然ながら敵の動きを常に把握しなければならないため、カメラワークも目まぐるしく動かしていく必要があるのですが、VRRをオンにした状態だと、やはり素早い動作での安定性が増しているように感じられました。本作のように一挙一動が常にゲームオーバーに関わってくるアクションゲームはもちろん、より高フレームレートな中でのシビアな操作が求められるFPS系のタイトルでも勝利に貢献してくれることと思います(なお、ツリーガードにはボコボコにされました)。

  • Windows PC用の設定ソフト「INZONE Hub」でもAdaptive-Syncのオン/オフが行える(赤丸の箇所)

そして忘れてはならないのが、H9に搭載されているノイズキャンセリング機能。ソニーといえば、近年のWH-1000Xシリーズに代表される、業界トップクラスのノイズキャンセリング技術に定評があります。そんなソニーのノイズキャンセリング技術が、本機ではどのように発揮されるのでしょうか?

  • H9のノイズキャンセリング機能を試す

今回のレビューでは室内の空調音や、モニターの真横に設置されていたPCの大きなファンの駆動音が聞こえていたのですが、ノイズキャンセリングをオンにするとそれらがピタリとなくなりました。ゲームを一時中断して無音の状態にしていても周りの音がかなり抑えられるため、自宅でも周囲の音をしっかりキャンセルしてくれるでしょう。

一方で人の話し声や物音など、一人でいるときに付近で起きにくそうな音に関しては(少なくともWH-1000Xシリーズと比べれば)キャンセル効果は少し弱めに感じました。アウトドアユースを想定されるポータブルのワイヤレスヘッドホンと異なり、自室内というシーンに最適化されたノイズキャンセリングが働いているのかもしれません。

また、逆に周囲の音を取り込むアンビエントサウンドモードもチェック。こちらもヘッドホンをしながら、周りの物音や話しかけられた声に反応できるなどなかなか便利なのですが、ゲームプレイ中についつい音量を上げて集中してしまうとやや気づきにくく、両立させるのが少し難しいのではないかと感じました。来客を待っているときなど、周りの音を聞こえるようにしておきたい状況では、ゲーム音を落としてプレイするのが望ましいかもしれません。

これらの機能の聞こえ方の設定や、各ゲームタイトルに向けたイコライザー調整は、INZONE Hubから簡単に行えます。特に立体音響機能については、スマートフォンアプリと組み合わせることで個人最適化を行うこともできるので、購入したユーザーにはぜひ試してほしい機能です。

  • INZONE Hubでゲームごとのイコライザー調整を保存可能

  • ヘッドセットの本体設定も可能。H9に備わっているボタンの機能割り当てや、LEDの自動消灯など細かなカスタムが行える

じっくり使いたくなる、ハイレベルな仕上がりを実感

以上、「INZONE H9」「INZONE M9」のご紹介でした。どちらも既存各社のゲーミングデバイスと比べてもなかなかの高水準で、この分野には初参戦となるソニーの技術力の高さを改めて実感させられました。なにより、数時間のテストプレイでしかレビューできないことが歯がゆい! 自宅の遊び慣れた環境で改めてじっくり使い込んでみたい、そう思ってしまうほどのポテンシャルを感じさせる仕上がりとなっていました。

  • ゲーム好きにはとても魅力的な環境でINZONEデバイスを試した

かつてソニーが初代PlayStationでゲーム事業に参入するとき、社内からは多くの反対意見が投じられたと言います。それらを跳ね返しての発売となって以降、ソニーがゲーム業界においてどれほど重要な存在となったかは皆さんもご存じの通り。

それから30年近くの時を経て、ついに新たなゲーミングブランドを誕生させたソニー。“家庭用ゲーム”とひと括りにできないほどに多種多様化した現代の個人向けゲーミング事情に適応する「INZONE」が、果たしてどのような立ち位置となっていくのか? ぜひ皆さんも一度店頭などで試して、その価値を体感してみてください。