コスト重視で省かれた機能たち
MX MECHANICALシリーズや、ロジクールのゲーミング向けメカニカルキーボードなどでは、ロジクールが独自開発したメカニカルスイッチを採用している。それに対しK855は、K835同様に、中国TTC製のメカニカルスイッチを採用している。
これについてロジクールは、独自メカニカルスイッチはコストがかかるため、コストを抑えるためにTTC製スイッチを採用していると説明する。コストダウンを実現するためにはしかたのない部分かもしれないが、この点は少々残念ではある。
また、MX MECHANICALや、ゲーミング向けメカニカルキーボードなどにも搭載されている、キーボードバックライトも非搭載となっている。このあたりもコストダウンを実現するためのものと考えていいだろう。
とはいえロジクールは、コストダウンするからといって、品質は低下させたくないとのことで、採用にあたっては打鍵テストを実施するなど厳密な品質チェックを行い、独自の品質基準をクリアするスイッチを採用したという。K855のスイッチは最大5,000万回の耐久性を備えているそうで、これだけの耐久性があれば安心して長期間利用できるはずだ。
ストロークは深くても軽快なタイピング!
メカニカルスイッチの軸は、K835では赤軸と青軸(クリッキー)が用意されていたが、K855では赤軸(リニア)のみとなっている。打鍵感は、赤軸らしいリニアなものとなっていて、スムーズかつ高速なタイピングが可能。
キーピッチは19mmフルピッチ。キーストロークは4±0.4mmで、ロープロファイルの軸を載せるMX MECHANICALよりも1mmほど深い。実際にタイピングしてみても、しっかり押し込むようにタイピングする必要があると感じる。
ただ、赤軸なので明確なクリック感がなく、軽いタッチでタイピングできるので、ストロークは深くてもかなり軽快にタイピングできるという印象だった。もちろん、メカニカルスイッチらしく確実なタイピングができる点も、とても心地がいい。
打鍵音は、メカニカルスイッチが赤軸ということもあって、スイッチが発する音はほぼないが、キーが底打ちするときのカチカチという音は比較的大きい印象。MX MECHANICALのような静音仕様とはなっていないようで、打鍵音はやや大きいと感じる。メカニカルキーボードを操作しているという印象は強いが、個人的にはもう少し静かな打鍵音だと良かったと感じた。
ファンクションキー列に機能キーを搭載
ファンクションキー列は、標準では先に紹介したペアリング機器を切り替えるEasy-Switchボタンや、絵文字機能、音声認識機能の呼び出しなども加えたメディアコントロールボタンを配置。もちろん、標準でファンクションキーを有効とすることも可能だ。
このメディアコントロールボタンは、近年のロジクール製キーボードで広く採用されているものと同じだが、現代のPCの使い方を反映したもので、それら機能をよく使う人にとっては便利なはずだ。
合わせて、オリジナルアプリ「Logi Options+」を利用することで、メディイアコントロールボタンの呼び出し機能を自由に変更可能なので、ユーザーそれぞれが自分の使い方に合わせて便利に機能をカスタマイズできるのも嬉しい部分と言える。
安価なワイヤレスメカニカルキーボードとして魅力的な存在
K855は、ワイヤレスメカニカルキーボードとしてはかなり安価な製品だ。メカニカルスイッチはサードパーティ製で、バックライトを搭載しないなどコストダウンの影響が随所に見られるのも事実だ。しかし実際に触ってみると、メカニカルキーボードとして申し分ない打鍵感とタイピングのしやすさが実感できる。
個人的には、もう少し打鍵音が静かだと良かったが、メカニカルキーボードとしての完成度はかなり高いと感じた。そのうえで価格は11,550円と安価なので、コストパフォーマンスは非常に優れている。
そのため、これまでメカニカルキーボードを使ってみたくても価格的になかなか手が出なかったという人にとって、魅力的な選択肢になるだろう。基本的には、タイピングの多い人に特にお勧めしたいが、この価格なら万人に十分お勧めできる製品と言える。