――両方のジャンルを経験することによって、バラエティの経験がお芝居に生きることはありますか?

それはたくさんありますね。バラエティって台本があってもその通りに絶対進まないじゃないですか。現場の雰囲気を見て、「今誰がしゃべるんだろう」「どういう会話するんだろう」「あそこにどう乗っかろう」って、距離感とか空気を読むことが結構大事になってくるんですね。もちろんコメント力も大事なんですが、それよりもどこでどういう会話を挟むかという空気の読み合いというか、キャッチボールを誰とするかが重要になってくるんですけど、この空気感というのは、お芝居においても絶対的に大事なんです。

お芝居はもちろんセリフが決まっていますが、同じセリフも10人いたら10人が違う形で言うんですよ。その人が作り上げた人物がいるので、こっちが台本を読んで考えていたセリフの言い回しとは違う形でくることもあるから、そのときの空気の読み合い、心のキャッチボールの仕方が、バラエティで研ぎ澄まされているというか、結構生かされているのかなと思います。

――そうした中で、今回は小沢真珠さん演じる百合園という強烈なキャラクターと対峙(たいじ)するわけですが、そこでのキャッチボールはいかがですか?

もう本当に百合園先生は、想像していた倍以上のものがくるので(笑)、必死に食らいついていかなきゃというのもありますし、放ってくれた分を受け止めなきゃいけない部分があるので、やっぱり小沢さんはすごいなと思いますね。誰よりもセリフ量が多いのに完璧にこなされるし、この人がこんなに本気でぶつかってくれるんだから、私たちももっと頑張らなきゃと思わせてくれる存在なんですけど、フレンドリーな方でとても話しかけやすくて。百合園先生と普段の小沢さんとのギャップが、ちょっとすごいです。

  • 足立梨花(左)と小沢真珠 (C)BS松竹東急/MMJ

――先ほどの質問とは逆で、お芝居の経験がバラエティに生きるということはありますか?

お芝居はその役として立っているので、セリフがいかにセリフじゃないように伝えられるかが大事だと思うんですけど、バラエティこそセリフっぽくなっちゃいけない部分がたくさんあると思っていて。事前に用意された質問でも、その場で瞬時に考えていたように見せるとか、そういう自然な言葉選びに演技をやっていることからこその部分がたくさんあると思いますね。

■『あまちゃん』でバラエティでもやっていけるように

――今年10月で30歳という節目を迎えますが、これまで芸能界のお仕事を振り返って、ターニングポイントを挙げるとすると何になりますか?

こうやってバラエティも女優もというのが通じるようになったのは、『あまちゃん』(13年、NHK)に出たことが大きかったなと思います。『あまちゃん』に出るまで、『ヒルナンデス!』(日本テレビ)で隔週レギュラーをさせてもらっていて、木曜に私と平愛梨ちゃんが交代で出ていたのですが、愛梨ちゃんは天然だから絶対勝てないんですよね(笑)。その後金曜に移ったら、今度は河北麻友子ちゃんと交代で、河北ちゃんも強すぎて、あの2人に勝てるものを自分が生み出せていないとすごく悩んでいたんです。そのときに『あまちゃん』のオーディションが通ってマメりんの役で出させていただくことになったら、そこから「『あまちゃん』に出てた子だよね?」ってなって、1つ自分のポジションが変わったような気がしたんです。

バラエティに出るときって、「バラエティタレント」として求められることと、「女優さん」として求められることって全然違っていて、「女優さんのポジションでも行ける」と思われるようになったことですごくやりやすくなったんです。それはバラエティに対して手を抜くようになったとかそういうことでは全くなくて、自分なりに自分のポジションを見つけられたというか。だから、『あまちゃん』があったからこそバラエティでもやっていけるようになったと思います。

――ドラマ出演によってバラエティでのポジションを確立するようになったというのは面白いですね。

だから、私は「演技を辞めてバラエティ一本でやる」と言ったら、たぶんうまくいってなかったと思います。それくらい、演技をやっているおかげでバラエティもやらせていただけていると思うんです。

――両輪で、両方欠かせないものに。

そうですね。どっちかが欠けちゃうと、どっちもできなくなるのかなと思います。

――それを踏まえて、30歳を迎えるにあたっての今後の展望はいかがでしょうか?

これからも私は「どっち」と決めることもなく、どっちも楽しくやっていきたいと思っていますし、いろんなお仕事をやっていて楽しいので、ゲームのお仕事もするし、もしかしたらグラビアをするかもしれないし、ジャンルを決めずにやりたいと思ったらチャレンジしていける人になりたいと思います。