――お二人からすると、当時の塚田さんはどんな印象でしたか?

鈴木: 今とまったく変わらないんですよ。優しくて、僕たちのことをずっと見てくれている。なによりも、この人が一番戦隊シリーズのことを好きなんだろうなっていうのはすごい伝わってきて、それはずっと変わっていません。

――塚田さんもこのお二人がそろうのは感慨深いのではないでしょうか。

塚田: 感慨深いですね。当時はジャンと理央だけの本が出るくらい、2人の関係は作品を象徴していましたから。

荒木: 『ゲキレンジャー』以来共演がなかったというのは、ジャンと理央という色が強すぎて、キャスティングしづらかったということでもあるのかもしれません。ほかの現場で共演しても、元ライバルだという印象が強くなって作品に没頭してもらえない。だからどういうふうに仕事をさせるかを考えたときに、マネージメントする側でも、別々にすることが多かったのかもしれません。

でも、そんな二人が、東映の作品で十数年ぶりに共演する、というのはそれ自体が物語な気がしたんです。ここだったら共演しても別のエピソードとして見てもらえるし、昔から応援してくれていたファンの方たちも喜んでくれるんじゃないかと思えるタイミングでした。だったら、やる意味があるんじゃないか。時間の経過による変化と今回用意していただいた環境、そういうものがそろった機会だったんです。

塚田: 『漆黒天』は、今まで東映内でやってきた【ムビ×ステ】の新しい試みとしてワタナベエンターテインメントさんに参加していただいています。荒木くんが主演ということだったので、ならば鈴木くんにもお願いしたいなというのはありました。

鈴木: こういうものって、もちろん塚田さんのように共演させたいと思う方がいてこそだというのは前提なんですけど、二人の中にそれぞれに対しての思いがなければたどり着いていないと思うんです。友情だったりリスペクトだったり、いろいろなものがあってこそです。だって嫌な奴とはやらないじゃないですか、たぶん(笑)。14年経っても、この人と芝居したいと思える人でよかった。次に一緒にやるとしたら何になるのか、自分たちの中でもハードルが上がっていたんですけれど、そのタイミングが今回だったんでしょう。久々に本気出しましたね(笑)。

――そんなお二人の共演を見ることができるのが、今回の『漆黒天』なんですね。

塚田: 魅力的な若いキャストたちが繰り広げる群像劇を作ってきた【ムビ×ステ】ですが、『漆黒天』はちょっと構造が違います。主人公である名無しを中心に、ほかのキャストは名無しに対してどうコミットしていくか、どういう機能であるのか。そこがすごく特徴で、全部名無しに集約している、”名無しの映画”なんだなと思いました。そのぶん主役に負担がかかっていると思うんですけれど、まさに”荒木映画”でしたね。

荒木: 僕は末満健一さんと『COCOON 月の翳り星ひとつ』でご一緒させていただいていたのですが、今回は末満さんが脚本だけで参加しているというのがとてもおもしろいところだと思っています。いつもは演出もしているイメージがあるのですが、映画『漆黒天-終の語り-』では台本だけを託して、坂本監督が撮られている。末満さんの世界観だけではなくて、坂本監督のイメージやアイデアが加わった状態で出来上がっているこの映画は新しい挑戦だと思いました。それは末満さんのファンの方からしてもそうかと思います。役者自身も、相手との芝居に本気で心を動かされて向き合える、恵まれた現場でした。それを映像でやれたというのがすごくおもしろかった。カメラの向こうに相手の目が見えるくらい、みんなドライから集中して演じていました。

鈴木: 荒木をはじめとするキャストのみなさんの表現はもちろん、坂本監督の演出が素晴らしい作品だなというふうに試写を見ていて感じました。音楽の使い方も素晴らしかった。全体を通して82分なんですけど、それがあっという間で、余分なものがない感じ。本当にスピード感があり、集中して観ることができるエンターテインメントになっていました。

塚田: 『漆黒天』を通して、時代劇ってやっぱりいろんなことができるしおもしろいということを作り手として再認識しました。『漆黒天』は、時代劇のおもしろさを感じてもらえる一本。アクションも本当にたくさんあるので、おなか一杯になっていただけるのではないでしょうか。

――今は配信もありますから、『漆黒天』を観て、次は『ゲキレンジャー』を観てみようと思われる方もいらっしゃると思います。

鈴木: そうですね。『ゲキレンジャー』は今観てもらっても絶対おもしろいと断言できます。どちらも”ニキニキ”なので、ぜひご覧になっていただきたいですね。

荒木: その際には、DVD特典にもなっている「臨獣トーク」もぜひ見てほしいです。

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